あうと・おぶ・ばうんず


ヘルストロン治療 20年の経験から

ある学術誌から依頼を受けて、ヘルストロン治療について書いた拙文を転載します。患者さんのみなさんのご参考になれば幸甚です。
ヘルストロン治療の詳細は、当院ホームページのヘルストロン治療の項目をご参照願います。

ヘルストロン治療 20年の経験から 三村整形外科 三村和博

平成3年5月に、医療ビルの一員として整形外科診療所を開業した。いまからちょうど20年前のことである。

 開業とともに導入した高圧交流電界保健装置ヘルストロンによる治療をおこなってきた多少の経験をご紹介したい。

 当時私は、ある公立病院の副部長として、部長の補佐から外来病棟の管理、研修医の指導と、いわゆる中間管理職として多忙な毎日を送っていた。いま流行の、2CHでいう、「洗脳された奴隷医」だった。週休二日制導入前で、土曜日も普通に外来があり、朝から晩までOPEに外来、週末にOPEした患者のSBチューブ抜去に日曜日も病院にくることもしばしばだった。当直明けでも眠気をこらえながら外来にOPE。。。という毎日であった。

 しかし次第に家族とのふれあいの時間がなかなかもてないことや将来のことが気になり始めていた。いわゆるモンスターペイシェントも出現し始めており、心が折られることもしばしばだった。

 心身ともに疲れてきていたーそんなおりに、親戚の取引銀行から、新しくできる医療ビルの整形外科担当で入ってほしいという依頼があり、いろいろ迷った末、開業を決めた。

 ところが、保険診療など事務任せ、診療報酬のことなど毛ほども気にしたことが無かった自分が、いきなりすべての責任を負う、個人事業主となるわけである。毎日が戸惑う日々であった。

 患者さんはきてくれるだろうか?スタッフは?運転資金はどうしよう、、医療経営コンサルタントのY氏がそんな素人のわたしにいろいろなアドバイスしてくれたなかに、「高圧交流電界保健装置ヘルストロン」があった。もちろんヘルストロンについてなんの知識もなかったが、集患効果や治療効果など、いろいろ話を聞いた末、導入を決めた。75坪ある広さを生かして、3万ボルトの装置で、10脚をヘルストロン専用室として独立させることができた。いちどに10人が治療できるような大きな規模は、近隣診療所ではなかった。

 以来、平均一日100人として、年3万人、これが20年、となると、ちょっとした都市の人口に匹敵する患者さんが治療をうけたことになる。

 一度に10人が治療できる施設は、医療施設としてはまだ稀だったようで、ヘルストロン療法施設をタイに建設する際に、バンコクから10数人ほどの医師を含む視察団が見学にみえたことがあった。

 わたしの拙い英語が通じたかどうか定かではないが、その後無事に施設は完成し、なかなか繁盛している由である。確かに発展途上国では経費のかからない治療としてはよいのかもしれない。

 また、開業してまもなく、小児のアトピー性皮膚炎に著効を示すことがわかって驚いたことがあった。患者として母親が肩こりの治療にこられていて、ヘルストロンを受けてもらおうと思ったのだが、子供さんが、4歳くらいだったか?大変むずがって泣き喚くので、仕方なく抱っこして椅子にすわってもらうことにした。ところが、何回か通ううちに、母親から意外なことを聞いた。

 重症のアトピー性皮膚炎で夜も眠れないくらい痒がっていたのが、最近よく眠るようになったという。見ると、赤かった皮膚も薄くなっている。

 ひょっとしてヘルストロンはアトピー性皮膚炎にも効果があるのだろうか? 患者数もまだ少なくて暇だったせいもあって、興味を持ったわたしは、その母親のつてで何人かの小児のアトピー性皮膚炎を紹介してもらって、ヘルストロン治療を受けてもらった。結果は半数以上で改善、もしくは著効がみられた。

 それも重症であればあるほど改善効果は高かったのである。本格的にリサーチしてみようかとおもっていたが、幸いなことに患者数が激増する時期にあたって、外来患者数が100人、150人、200人と順調に増えてくると、忙しくなり、まして他科の専門でもあることから断念した。しかし、ヘルストロンの学術担当者にはこのことを伝えてあり、本格的なリサーチが待たれる。

 難治性のアトピー性皮膚炎に適応が取れれば、ステロイドなどを用いない、副作用の無いヘルストロン治療は患者さんに福音をもたらすことだろう。

 考えてみれば、花粉症にも効果があるのだから、アトピー性皮膚炎にも効果があってもよいはずである。

 また、ある日のこと、腰痛で半年ほどヘルストロンに通っておられた40歳代の女性からまたまた意外な言葉を聞いた。なんと、不妊治療に通ってだめだったので、数年前にあきらめていたのに、御懐妊された、とのこと。。。以前の担当医に報告にいったら不思議そうな顔をされたとか。。まさか、ヘルストロンが不妊症に効果があるとは、、まあ一例報告なので統計学的価値はないので、確かなことはいえないが、患者さんは大変感謝されておられた。無事に出産されたとのことだから、いまその子はもう高校生か大学生になっていることだろう。

 どうも専門外の事例ばかりご紹介したが、いうまでもないことであろうが、もちろんわたしの本業である整形外科、リハビリテーション科の分野でもヘルストロンは大いに活躍をしてくれたことを申し述べておく。

 最後に、ヘルストロンの長所のひとつに、めだった副作用が無いことにある。何人かの患者さんが、いわゆる「湯あたり」症状を訴えたことはあるが、ヘルストロンを中止したことはごくまれであったと記憶する。(不整脈・ペースメーカー装着などのヘルストロン適応外のかたを除外することはもちろんである)

 わたしの経験では、高齢の方が多い整形外科分野の患者さんでも気軽に、安心しておこなえる治療であると考える。