あうと・おぶ・ばうんず


「総合医」は医療費抑制の切り札か?それとも、
医療崩壊をもたらす悪魔の使者か?

<はじめに>

厚生労働省は9月16日、2009年度に病気やけがの治療で全国の医療機関に支払われた医療費が、概算で35兆3千億円に上り、7年連続で過去最高を更新したと発表した。70歳以上の医療費は15兆5千億円で全体の44%を占めた。

 1人当たりの医療費も、70歳以上では前年度比で1万9千円増の77万6千円、全体では1万円増の27万6千円と、ともに過去最高を更新した。
入院も含めた受診延べ日数は5年連続で減少し、前年度比0・6%減だったが、1日当たりの医療費は4・1%増加。厚労省は「医療の高度化に伴い、受診回数が少なくても治療できるようになった半面、単価の高い先端技術や新薬の使用が医療費全体を引き上げている」と分析している。

 医療費は高齢化などの影響で毎年3〜4%程度の自然増が見込まれている。09年度の伸び率は3・5%増で、従来とほぼ同じ水準だった。 http://www.47news.jp/CN/201008/CN2010081601000783.html

 のっけからあまり愉快でないニュースで恐縮だが、事実は事実である。
医療費の自然増は毎年1兆円といわれている。高齢化しているわけだから当然のことなのであるが、小泉内閣ではこれを無理やり抑制し、あまつさえ毎年2200億も減らそうとしたため、あらゆるひずみが具現化した。我々開業医の診療報酬も史上初めて大幅減額改定されることになり、開業医の大いなる怒りを買うことになった。先の総選挙でも医師の実に6割が民主党に投票した。自民党政権が崩壊し、政権交代となる遠因となったわけである。
(話が横道にそれるが、私自身は外国人地方参政権容認、人権擁護法案、夫婦別姓法案、国籍法改悪、沖縄を一国二制度にして中国人を3000万人移民させるという民主党沖縄ビジョン、貧弱な安全保障政策などの反日売国政策を掲げる政党であると考えて民主党には投票しなかった。興味のある方は「民主党の正体」で検索していただきたい。

 政権が交代した結果、経済素人の民主党政権で日本経済が衰退して景気が悪化しまったわけで、政権交代してよかったか、というと決してそうではないと思う。

  民主党がいやがらせをして葬った、麻生内閣の補正予算をきっちりと執行できていればこんなことにはならなかった。リーマンショック以後麻生内閣は矢継ぎ早に緊急経済対策を打って、その結果、わが国は世界で最初にGDPがプラスに転じようとしていたのだから、実に惜しまれる、、やはり生まれ変わった若手中心の新しい自民党にもういちどしっかりやってもらうしかないようだ。
もちろん小泉改革のような社会保障費毎年2200億削減の件はやめてもらって、今度こそ国民医療を真に守る政策をしてもらうことが条件であるが。

 最近は尖閣事件で民主党は外交までもがド素人であったことが露見してしまったようだ。もう、この連中に政治経済をまかせておくことはできない、というのが昨今のわたしの感想)
話がわき道にそれたが、要するに何がいいたいのかというと、「今後財務省、厚生労働省に主導された民主党政権はよりいっそう社会保障関連費、とりわけ医療費の抑制をたくらんでくるであろう」ということである。

 財務官僚、厚生労働省官僚の医療費抑制への「たくらみ」とはどのようなものになるのだろうか? 

 わたしがインターネットそのほかで今までに得た情報をご紹介し、これらを元に次回、次々回の診療報酬改定の基本方針を予測してみた。キーワードは、表題に掲げたが「総合医」である。(ネタ元はインターネトのURLで表記した。)

 まず、小泉内閣のような、社会保障費を毎年2200億減額といった明確な数字はしめさないだろうが、今の民主党内閣が社会保障費を今後さらに減額する方針には間違いない。メリハリはつけるだろうが、我々開業医の診療報酬が上げられるということはまずない、と考えておいたほうがいいだろう。
すでに救急医療や病院関係の予算は増額するという方針が示されており、そうなると財政中立を考慮すると、開業医の診療報酬減額で辻褄あわせをするしかない。民主党政権でわれわれ開業医の診療報酬が増額、なんてことは妄想幻想に過ぎないのである。

 では、その具体策について考察してみよう。
先ごろわたしが所属する開業整形外科医の団体である、日本臨床整形外科学会の担当理事が厚生労働省の担当者からヒアリングを行った内容を参考にして考察してみよう。
厚生労働省の担当者曰く、

  1. (昨年秋の)事業仕分けの判定通りにやっている

     すなわち、「診療報酬の配分」の再仕分けである。

  2. 急性期医療を重視する。命に直結する急性期医療は温存する。命に直結しない慢性期医療は削る。

     どうやらこれが基本方針らしい。つまり、救急医療(もちろん小児、産科救急を含む)に手厚く配分して、国民に派手なパフォマンスでアピールしつつ、入院設備をもたない、われわれのような慢性期医療を担当する開業医は冷遇する、なぜなら目立たないから。「儲けすぎ開業医」の取り分は減らして、「一生懸命身を粉にして働いているのに低収入で可哀そう」な救急医にまわしてあげましょう、、というわけである。
    みなさんのお怒りはごもっともであるが、お怒りはお怒りとして、もう少し冷静に考察してみよう。

  3. 収入が高い診療科の見直し

     これは整形外科診療所が狙われているようである。
    今次改定でも、整形外科診療所の平均所得が4600万円、だから儲けすぎだ、とか捏造デマを流された。美容整形なんかもふくまれていた杜撰なデータがもとだったのであるからむべなるかな、、といったところだが、、
    ともかく、日本臨床整形外科学会の担当理事の必死の努力でなんとか整形外科診療所狙い撃ちの減額改定だけは避けられたが、次回はわからない。(耳鼻科眼科なんかはかなり減額改定だったと聞く。)

  4. 開業医・勤務医の平準化を図る

     医療提供モデルにおける徹底した効率を追求する。

     開業医は簡単な医療だけしていれば良い。高度な医療を行うのは病院に限る。開業医が高度な医療をおこなうのは、医療資源の無駄遣いであり、医療施設の機能分化が未熟である。

     では、「開業医・勤務医平準化」とは何か?これはつまるところ、開業医の収入を減らすわけである。(勤務医をあげるのではない、というのが腹が立つところであるが、、、)
    楽をして?かせいでいる開業医の収入が当直明けも連続勤務して疲弊している勤務医より多いのはおかしいというわけである。
    マスゴミのミスリードーすなわち

    楽して儲けすぎの開業医 VS 働きすぎ過労で薄給のかわいそうな勤務医

    という構図をでっちあげることで、国民を洗脳するわけである。
    いいですか?これは私が言ってるのではないですよ。官僚の連中が本気でいってるんです。皆さん怒らないでください。(笑)

     ではどうやって開業医の診療報酬を減らすか?
    医療の無駄を除く、という美名のもとに、慢性期医療の医療費を削減する。
    そのためには、受診回数を減らす。そして、重複受診をなくすことで患者数を減らす。

 ではどうやって?
ここで登場するのがいわゆる「総合医」である
「総合医」については、現時点では日本医師会は反対しているのだが、関連学会が統合して、「総合医」認定資格の創設を図るなど、下地は着々とすすめられている。
 NHKテレビでも、総合医を持ち上げる番組を放映しているように、マスゴミによる国民の洗脳はすでに始まっている。

総合診療医ドクターG
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/総合診療医ドクターG

『総合診療医ドクターG(そうごうしんりょういドクタージー(ジェネラル))』は、NHK-BSで放送されている医学・医療関連のクイズバラエティ形式による情報番組である。
毎回、番組内において「ドクターG」と呼ばれる現役医師("General"が示すように、主に各診療科を横断する総合診療や救急診療に携わる、専門著書などを出すなど、その方面で著名な医師が招かれる)が出題者となり、実際にあった症例の再現ドラマの後、その時点で考えられる病名について現役若手医師の「研修医」、そしてゲストのタレントも加えた症例検討会形式の1回目の討論を経て、再度再現ドラマの続きとそれに基づく2回目の討論後にさらに病名を絞り込んでいき、正解と解説が発表されるというのが基本的な流れとなっている。
お笑いコンビの浅草キッドを司会に、ゲストタレントを配してエンターテインメント仕立てにしているが、内容的には、体の細かい状況や、検査結果の数値を元にした病名の可能性の引き出し、臓器の機能(一例では副腎と下垂体とのホルモン分泌関連)など、医療や医学の専門的な部分に深く踏み込んでおり、特に「ドクターG」と研修医との討論内容については、一般のゲストタレントや視聴者では理解できない(というよりも、完全に臨床研修での研修医や医学生レベルの内容とされる[1])部分もある。それに沿って、病名の確定後、出演する研修医に対する注意やアドバイス(例:触診の重要性や誤診の危険性、広い診療分野に携わることの重要性など)やゲストや視聴者に対して、実際に医療機関を受診する場合の注意やアドバイス(例:化粧をしない、など)、ドクターGから研修医へのメッセージで結ぶ。
近年「かかりつけ医」の重要性が改めて高まっており、総合病院でも救急医やかかりつけ医に近い「総合診療」の役割が大きくなっている。この番組はそうした「総合診療」をテーマとして扱っているのが、それまでのNHKの医学・医療番組ではなかなか見られなかった特徴であるとして、大変注目が集まっている。

 ようするに総合診療医ドクターGというのはポリクリやBSTベッドサイドティーチングに毛がはえたような番組だ。
何回かわたしも偶然みたが、あまりのくだらなさに途中でやめた。
参考までに、現時点での厚生労働省が公表している、総合医の定義はこうである。

2007年05月01日
http://venacava.seesaa.net/article/40481354.html

厚生労働省が新たな診療科として「総合科」を創設する。

受診、最初は「総合科」 専門医に橋渡し

 厚生労働省は、専門分野に偏らない総合的な診療能力のある医師を増やすため、新たな診療科として「総合科」を創設する方針を決めた。
 能力のある医師を国が「総合科医」として認定する仕組みを整える。初期診療は総合科医が行い、必要に応じて専門の診療科に患者を振り分ける2段階方式を定着させることで、医療の効率化を図り、勤務医の労働環境の改善にもつなげる狙いがある。日本医師会にも協力を求め、5月にも具体策の検討に入り、早ければ来年度中にもスタートさせる。
 総合科は、「熱がある」「動悸や息切れがする」「血圧も高い」など一般的な症状の患者の訴えを聞き、適切に治療したり、専門医に振り分けたりする診療科を指す。同省では、開業医の多くが総合科医となり、いつでも連絡がつくかかりつけの医師として、地域医療を支える存在となることを期待している。
 医師が自由に看板を掲げられる内科、外科、皮膚科などの一般診療科とは区別し、総合科医を名乗るには、同省の審議会の資格審査や研修を受けたうえで、厚労相の許可を受けなければならない。国が技量にお墨付きを与えるこうした診療科は、これまで麻酔科しかなかった。
 日本の医療現場はこれまで、日常の診療を行う診療所(開業医)と、24時間対応で入院と専門治療に当たる病院との役割分担があいまいだった。このため、胸の痛みやめまいなどを感じた患者が、どの医療機関にかかるか迷った末、大事を取って専門性の高い病院に集中。軽症患者から救急患者まで多数が押し寄せる病院では、医師の勤務状況が悪化し、勤務医の退職が相次ぐ一因にもなっていた。
 同省では、総合科導入を「医療提供体制を改革する切り札」と位置づけており、5月にも医道審議会の専門部会で議論に入る。将来的には、診療報酬上の点数を手厚くすることも視野に入れる。
 能力の高い総合科医が増えれば、初診の患者が安心して総合科を訪れるようになり、「3時間待ちの3分診療」と言われた病院の混雑緩和にも役立つ。例えば、疲労を訴える高齢者が総合科を受診した場合、高血圧など基本的な症状の改善は同科で行い、心臓などに深刻な症状が見つかれば、速やかに専門医につなぐ仕組みを想定している。
 厚労省とは別に、今月から「総合医制度」の具体的な検討に入っていた日本医師会(唐沢祥人会長)も、総合的な診療能力のある医師の養成で同省に協力していくことを確認。総合科の創設についても、「患者が求める方向であり、異論はない」(地域医療担当理事)としている。

(断っておくが、この日本医師会の担当理事はもうやめられており、日本医師会は公式には総合医創設は反対を表明していることはご承知かと思う。)

「総合医」への反対意見

これにたいして早速反論がされている。ある医療ブログから引用する。
http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/sougoui.html

総合医について
2008年7月12日日本版マネジドケアの完成
 医師を総合医(開業医)と専門医(勤務医)にわけて階層化して、制度化することで医療供給体制を整理する。トータルとしては、国家医療情報ネットワークNHINで個人と医療機関を徹底管理する。それによって、患者さんの行動や医療の無駄=医師の不徹底を取り除き、矯正して、医療費を抑制する。発生源入力ならぬ、発生源から撲滅しようという発生源撲滅作戦。焦土作戦です。オーウエルの1984年どころではない、地域の個人の生活管理までする訳ですから究極の管理国家像です。
管理医療
 管理医療は医療においては様々な方面で使われます。患者さんの管理強化を行うための制度としては特定健診、総合医などがあります。
総合医とは。
 一医療機関への患者登録制が制度の基本です。人頭制といいます。患者さんは特定の1人の総合医に登録します。すべてその総合医との相談の上でなければ、原則、他医療機関受診はできません。患者さんを医師の完全コントロールの元におくために、制度により様々な受診抑制をかけられます。現在のように、自由に医療機関にかかることは困難になりますので、患者さんにとって著しく利便性の低下になるものといえます。
総合医による徹底した患者さん管理医療
人頭制;患者登録制=総合医による一人主治医制度は、患者さんのかかえこみにより他科受診を抑制する
 総合医による一人主治医制は、現在の、患者さんが医療機関を自由に選んでいる受療形態を、医療の無駄を除き、かつ患者管理を徹底するために制限します。特定健診にみられるような、いわゆる管理医療的な考え方です。それにより医療費削減を図る。
導入理由
1)医療費削減:医療の無駄を除く。
2)簡単な病気でもかかるコンビニ批判
  軽症トリアージは患者さんには無理であるから、専門医受診を制限する。全て総合医を通す。
3)多数主治医による無責任医療
  患者さんを一人の主治医が集中管理すべき
 患者さんの管理を行うために総合医と患者さんで1対1の関係を制度化する。総合医による管理を徹底するために、患者さんが他院に受診するのを様々に制限する必要がでてきます。
総合医導入による様々な制限
 患者さんは、救急の場合を除き、まず地域の診療所に出向きそこでGP(General Practitioner:総合医)から必要な医療を受ける。専門医への紹介が必要な場合には、他の病院や専門施設を紹介する。GPは英国のプライマリケアを担う「家庭医」であり、PCTと契約を結び、診療所では複数のGPがグループ診療をしていることが多い。NHS医療を受けるためには、住民は必ず地域のGPに登録しなければならないので、専門的な治療を受けたい場合でも、GPの紹介がなければ長期間待機などかなり手間取ることになる。
1)登録制;総合医と患者さんの間で1対1の関係(主病は一つ、主治医は一人)を作り医師に管理責任を持たせる。患者さんを徹底管理教育する。
2)フリーアクセス制限;まず総合医を受診させる。専門医は不可
3)予約制;いちいち予約を取る
以上で他科への受診を極力制限する形でこれで総合医が患者さんの完全管理=コントロールができる。
実際の導入後のイメージ
 現在の保険診療で、似ているのは人頭制準備モデルである後期高齢者管理料(主病は一つ、主治医は一人、主算定機関は一つ)と「入院中の他科受診制限規定」です。「主治医は一人」はちょうど入院中の患者に比定されます。入院中の患者さんの他科受診は厳しく制限されています。参考文献に挙げておきましたので、他科受診がどの程度制限されるか参考にしてください。
イギリスでの総合医の状況
1)一人で開業する形態はほとんどない;現在の開業医の絶滅
家庭医の約5分の4が、診療活動に関して複数の家庭医が協力するグループ診療を行っている。一人で全ては事実上無理ということであろう。一人開業は10%以下というデータもある。日本はグループ診療はほとんどない
2)GP一人あたり登録患者は約1,000-1500名。
3)シングルであればまず零細となる。家族経営であるところも少なくありません。
4)患者さんは自由に通院先のGPを選択できますが、一旦決めたら、引き続きそこに通うことになります。
5)患者さんは、専門医による治療を阻まれると思うことが多い。
6)GPと専門医とのコミュニケーションが大変悪い
日本で予想される状況
1)登録される予想患者数は最大で1200名/一医療機関です。他国に比べて著しく少なくなると思われます。
2)登録された患者さんが全て受診するわけではありません。有病率は3割程度です。
3)診診連携の激減;主治医は一人ですから重複受診はほとんどなく
なります。
4)他院受診は原則転医となると予想されます。入院中の他院受診規定より類推。
日本人口/医療機関数=1億2千万/10万件=1200名/1医療機関
レセプト枚数/日本人口=18億枚/1億2千万=15枚/1人
レセプト枚数/医療機関数=18億/10万=1800枚/1医療機関
まとめ
1)他科受診制限。
 登録制による他科の受診制限は如何なものかと思います。「患者さんはご自分で信ずるかかりつけ医に自由にかかる権利がある」はずです。診診連携や病診連携が否定されれば質の低下も起こります。
2)非効率
 いちいち予約を取るのは、はなはだ効率が悪いと思います。予約は本来制度ではなく、各医院の裁量で行えば良いはず。当院ではすでに行っていますが面倒とかで、ほとんどつかっていただけません。イギリスは結果として待ち時間の増大となった。
3)キャリア交流や人事交流がない。
現在の日本の開業制度は、専門医が開業して、専門医と開業医の相互のキャリアの移動や交流があり、地域連携で診診連携や、病診連携で、いわば地域のチーム医療で対処している制度です。しかし総合医を導入して、GPと専門医を明確にはじめから養成コースを分ければ、専門医=勤務医と総合医=開業医はキャリアの移動や、人事交流はなくなります。また、総合医が、いわばタコツボ的に、患者さんかかえこみで、診療しますので、いわゆる診診連携はほとんどなくなると思われます。病診連携だけとなる。しかもキャリアの移動や人事交流がありませんから、イギリスのように、開業医と勤務医の相互のコミュニケーションが悪くなるのは明白です。
4)患者さんの反発
 医療機関の受診に当たっては様々な制限がかかる。このようなシステムが、自由に受診できる、今の医療に慣れている患者さんに受け入れられるとは到底思えません。当然かなりの反発が出るでしょう。受診抑制をかけたガチガチの管理医療です。健保連アンケートでも患者さん側からは否定的な結果がでています。日医も検討はしている様ですが、現時点では国民各位も望んでいない制度です。慎重なる対処を願いたいものです。 

「総合医」を導入すればなにがどのようになるのか?

  • まず、総合医を導入すれば他科受診がなくなる。(できなくなる)
    現在3割程度ある重複受診をなくす。当座は3割患者減。
    診療所一つでせいぜい1000人(人口/医師数)登録する。
    有病率を考えればせいぜい100人程度/月しかこないことに、、

  • 一施設あたりの医療費削減:診療所の規模を縮小する。
    当然診療報酬も極小になるでしょうね。

  • 一日300人も400人も患者がくるような診療所の存在を許さない。

  • 医療設備を必要最小限にする。問診を中心とした簡単な医療だけを行う。 
    レントゲン、超音波、CT,MRIはいらない。
    後で紹介するスウェ一デンの事例でもおわかりのように、お金が_かかるので検査はなかなかやってくれない。

 スタッフもいりませんね?採血も検査もしないんだから、、必要最小限の点数制度にして。かつまるめで単純化することで可能な限り安くあげることができる。

 わたしは開業前に、大阪厚生年金病院という基幹病院に勤務していたが、そこでは病院玄関をくぐると総合受付、というのがあって、自分の受診するか科がわからない患者さんの相談に乗っていた。担当していたのはベテランのナースであった。「おなかが痛いの?おしっこに血が混じってない?便はちゃんとでている?下痢はしてない?生理は順調みたいだから婦人科じゃないわね、、、とりあえず消化器内科にいってみましょうか?そこの廊下の突き当りを右に曲がって、、、」てなかんじ。このナースでも十分つとまるのが「総合医」なわけである。こんなもんを導入するなんて厚生労働省官僚諸君よ、君ら正気か?

 つぎにどうなるかというと、、デモしか開業医を否定する。

 勤務医に嫌気がさしてやめた医者—実はわたしがそうなのだがーが開業するパターンを否定する。つまり、逃げ道を許さない。コースをしっかり分割して、総合医、家庭医ははじめから総合医、家庭医に、勤務医は最後まで勤務医として働かす。相互移動はなくなる。というか制度的に許さない。
まるで江戸時代の身分制度じゃないかね?武士の子は武士、農民の子は農民、ってか?馬鹿馬鹿しい。
アメリカでは総合医、家庭医のなり手は低収入だからいない。プール付の豪邸に住んでプライベートジェット機でカリブ海の別荘にいって、美女をはべらせてシャンパン片手に優雅に遊んでいるのは、その道の専門医である。   
たとえば何億円(何百万ドルか?)ももらって、MLBのエース投手の肘靭帯再建術するような、、あるいは、女癖が悪くて失敗した某超有名プロゴルファーの膝靭帯再建手術をするような連中である。(ちなみに誰かさんとちがって、わたしには愛犬はいるが愛人はいない)
余談だが訴訟社会の米国では、はやっている専門医の報酬は超高額であるが、医療訴訟の賠償額も数十億円とかとんでもない額になる。ある州では産科医師へのあまりの高額賠償金支払い判決が続いたため、産科医がいなくなって、妊産婦が道端で出産するようなことがあったそうな、、まあ、米国社会の医療における光と影である。そういえば、この分野を描いた「シッコ」という映画が数年前ヒットしていた。南前医師会長も勧めておられたが、面白いのでまだのかたはぜひご覧になっていただきたい。
またまた話が横道にそれるが、、、 映画「シッコ」について紹介しておこう。

『シッコ SiCKO』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(http://ja.wikipedia.org/wiki/シッコ

『シッコ SiCKO』は、アメリカ合衆国の医療制度をテーマとしたドキュメンタリー調、かつコメディー調のアメリカ映画。「シッコ (sicko)」とは、「狂人」「変人」などを意味するスラングである。
監督は、社会問題を扱ったドキュメンタリー作品で物議を醸すマイケル・ムーア。アメリカでは2007年6月に公開、日本では同年8月25日より公開された。日本でのキャッチコピーは、「テロより怖い、医療問題」。調のアメリカ映画。「シッコ (sicko)」とは、「狂人」「変人」などを意味するスラングである。
監督は、社会問題を扱ったドキュメンタリー作品で物議を醸すマイケル・ムーア。アメリカでは2007年6月に公開、日本では同年8月25日より公開された。日本でのキャッチコピーは、「テロより怖い、医療問題」。

アメリカ合衆国は国民健康保険制度がない唯一の先進国である。民間の医療保険に入れない人がおよそ5000万人いる。貧困層でなくても、過去のわずかな疾患を緻密に探査され保険への加入を拒否されたり、保険金の支払いを拒否される人は多い。
大多数の米国人はこの映画の中で、国民皆保険制度はソビエト型のような社会主義であるとしてアレルギーと恐怖を感じ、いざというときの状況に対する危機意識が低く、政治については無関心あるいは条件反射的な反応しかせず、相互扶助や弱者を助けようとする精神にも乏しいとされている(これはマイケル・ムーアの一貫したスタンスでもあり、華氏911やボウリング・フォー・コロンバイン、マイケル・ムーア in アホでマヌケな大統領選(出演作品)においても共通している)。この事は、国民皆保険制度があり、さらに医療費が無料のカナダやイギリス、フランスなどの国民の意識と対比され、危機意識については、ちょっとの旅行にも保険をかけていくカナダ在住のマイケル・ムーアの親戚の事例も対比として示される。
医療費が払えず病院にかかれないので、自分で傷口を縫う人。
仕事中に誤って指を二本切断。指をくっつける手術費用が薬指は12,000USドル、中指なら60,000USドルと言われ、中指は諦めざるを得なかった人。
医療費があまりに高額で家を売りに出し、こどもたちの家に世話になり静かな諍いが起こる老婦人。
高齢であってもなお、自分の医療費を払うために働かざるを得ない老人。
交通事故により病院に運ばれ一命を取り留め、保険会社に保険金を支払ってもらおうと連絡したら、当時は意識不明の重態であったにもかかわらず「救急車が使用される場合には、事前に連絡が無ければ保険は適用されない」と言われた人(ちなみにアメリカでは、救急隊を派遣させるだけでも日本円にして数万円単位の請求が来る。救急隊は日本のような消防所属ではなく、独立した機関)。
複数の医師からなる病院の医療チームが「この検査と手術が必要」と言っているにもかかわらず、保険会社はそんな検査や手術は必要ないとして保険金の支払いを拒否し、結果として治療を受けられずに亡くなった人。

以上 シッコについてはこれで終わり。ぜひ映画をご覧願いたい。

どうもたびたび話が横道にそれて恐縮である。
 さて「総合医」の話を続ける。
 総合医を創設すると、「専門医」は現在のような「臓器別」専門医制度で、診療所と病院とか「施設形態」に関わりなく、万遍なく存在する必要性がない。
つまり、わたしのような「整形外科専門医」の開業医はいらない。必要なときに総合医から紹介されてきた患者を専門医のいる病院でみることができればそれでいい。
いまのように、街中に高度な医療技術や知識経験のある「専門医の開業医」は医療費抑制にとって目の上のたんこぶ、邪魔な存在、というわけである。

 開業医すなわち総合医、家庭医は臓器別専門医ではなく、「なんでもみる」総合医だから、点数表を臓器別に細かく分ける必要はないし、点数表の単純化にもなる。厚生労働省官僚も楽チンだろうね。
とにかく、総合医は簡単な医療だけ見ていればよい。
高度な専門医療が必要になれば病院にいる臓器別専門医に委せればよい。難かしい疾患を「開業医ごとき」が行う必要はない。「おまえら町医者は風邪ひきやギックリ腰をみておればいい。余計なことをやって医療費を増やすな」
というわけである。診診連携や病診連携も否定する。余計なことはするな、というわけ。

 さて、ここまでお読みいただいた皆さん、お怒りはごもっともですが、、ここで頭を冷やして冷静に考えてみましょう。
確かに「総合医」は医療費の劇的な抑制には効果があるでしょう。いまの日本医師会加盟会員にかかる医療は3割4割、いや下手すりゃ半分くらいまでの縮減は可能でしょうね。
もちろん「総合医」導入となったらわれわれ開業医の収入はそれだけ減るわけで、影響は甚大、壊滅的といっていいでしょうね。

 今の歯科医開業医の運命がわれわれ開業医をまっていることでしょう。
(東京の某市の歯科開業医の平均年収は300万円だとか、、、歯科開業医があまりの低収入であることがわかってしまったのか、志願者が激減している。今春のすべての私立大学歯学部で定員割れ、という悲惨なことになっている。名前さえ書ければ合格する、、悪夢なのか?いずれ医学部もそうならないという保証はない。20年前開業歯科医といえば高額納税者の常連であったことは記憶に新しいところである。
にわかには信じがたいと思われるかたも多いでしょうが、興味のある方はインターネットで検索してみてください)

 いままでのべてきたとうり、総合医は医師はもちろん患者にとってもきわめて問題のある制度であり、事は保険診療の根幹、ひいては医師であることのアイデンテテイにもかかわってくる重大な事案であることはご理解いただけたと思う。

 しかし、いったん厚生労働省財務省官僚および政府が導入を決めたらもうあとには戻れない。
なにせオカミニハサカラエナイのですから。ここは医師と主権者である(わ れわれ医師もそうだが、、)患者さんが共同で総合医導入阻止にむけ共闘する以外生きる道はないと考える。

どうやれば患者さんと「総合医」導入阻止への共闘への道をを探ることができるのか?

 これを解決するキーワードは「情報開示」である。
総合医、家庭医制度を採用する国の国民がいかに悲惨な医療をうけているか「情報」を開示して、日本国民にあまねく知らせること、これに尽きる。
敵は公共放送であるNHKを使ってまで国民を洗脳にかかってきているわけで、洗脳には「正しい情報」を開示流布することでもって対抗すべきなのである。
そしてここが重要なのであるが、「正しい情報」を開示流布するためにはマスコミを見方に引き入れることが絶対条件である。

 「だまされてはいけませんよ、総合医制度が導入されるとあなたがた患者さんはこんな悲惨な目にあいますよ!われわれ医師会は絶対反対してます。共に総合医導入阻止にむけて戦いましょう!」とやるのだ。(あとで紹介するスウェ一デンでのエピソードなんかを詳しく国民にあまねく周知するのである)

 ただ、アンチ医師、医師会のマスゴミ、あえてマスゴミといわせてもらうが、彼らがわれわれと共闘してくれるだろうか?それこそ薩長同盟のような転換が必要だろう。しかしマスコミ諸氏にも良心があることを信じたい。
このまま日本国民、患者さんが不利益不幸になることを座視することはない、と。もちろんそれなりの医師側、日本医師会からの働きかけは必要だろうが。

 いずれにせよ、国民、マスコミ、医師会の3者による共闘は絶対条件である。
まずは大阪府医師会から日本医師会にはたらきかけて、「総合医」導入が妥当かどうかを検証する委員会を設けることから始めるよう提唱したい。

 では、総合医を導入した国が実際にどのような悲惨な医療状況になっているのか、あるブログから引用してみよう。にわかには信じがたい内容であるが、長年スウェ一デンに市民権をとって移住している筆者がみをもって体験した事実である。

福祉最先進国といわれる北欧のスウェ一デンの「総合医」はどうなの?

<恐ろしや!誤診の数々。スウェ一デンの医療システム>

http://reekan-j.hp.infoseek.co.jp/swetoho4.html

日本で風邪をひいたら内科に行くよね?骨折したら整形外科、痔になったら肛門科、、、等、症状によって患者が医者を選べるという利点が日本にはあるけど、スウェ一デンのシステムではそうはいかないのだわ。まず保健所みたいなとこ(vaardcentralen, 訳して看護センタ一)に行って自分が住む地域担当のお医者さんに会います。このお医者さんは総合医といってそれこそ産婦人科以外の指の切傷から癌に至るまで全ての症状を一人で診断しなきゃならないので大変。この時、専門医の診察が必要とみなされて初めて病院へ紹介状を書いてもらえる、というしくみ。でも、なかなか紹介してもらえないんだよね。「いま専門医は休暇中」とか「予約が半年以上いっぱいだ」とか色々理由を付けては病院への紹介を拒むんだよね、これが。当たりの悪い医者だったらいい加減な診断されるから、大変なんだよ。わたしゃ、誤診される前に日本へ帰って診察を受けたからまだ被害はないけど、ここの友人は殆ど例外なく多かれ少なかれ誤診の被害者なの。

ラッセ(50歳代前半)の場合
風邪とは少々違う頭痛を憶え地域担当医に会ったが「風邪でしょう」といわれ帰される。しかし頭痛はひどくなるばかりなので再びセンタ—へ。しかし取りあってくれない。そんなことが5カ月続き家族の皆も不安になる。半年過ぎたころ、ラッセは急に物忘れがひどくなる。検査を強く希望しても地域担当医は「年齢的におかしくない症状だから心配しないように。」ところがある日ラッセは一日何をしたのか覚えていない程物忘れがひどくなり、奥さんがあわててラッセと共に地域担当医のもとに連れていく。「ですから、年齢てきにおかしくない症状ですってば。」いつもと同じ態度の医者に激怒した奥さん、机をバンっと叩き「半年以上も異変を訴えているのに、なぜ検査をしようとしないの!?今すぐ私の目の前で紹介状を書きなさい!さもないと、この足で直接弁護士のところへ行ってあなたを訴えます!!」物凄い剣幕に驚いた医者は渋々紹介状を書いた。数週間後、晴れてラッセは病院の専門医の診断を受けられる。結果は脳の癌だった!現在薬で癌の進行を抑えている。

ロサンナ(20歳代後半)の場合
元々胃腸が弱いロサンナ、慢性胃痛に悩み地域担当医師にもとへ。そしてある薬を処方される。症状はそれほど改善されないが、妙な副作用があった。薬を服用した日はとてもハイテンションになり夜間は一睡もできない、しかし全く疲労感はない、、、とにかく数日眠れない、という。私の友人シシリアも頭痛を訴え処方された薬がこの、ロサンナの「胃薬」と全く同じものだった。そして「この薬を飲むと気分爽快になって、全然眠れないのよね。」と言っていた。私は「胃が痛い時に処方された薬が頭痛を訴えた時に処方された薬と同じって変じゃない?それに夜眠らなくても一日中ハイって、なんだかあぶなくない?」と心配になり私の父(医師)にこの薬の正体を調べてもらうことにした。結果、、、「直ぐ服用を止めるように!日本ではとっくに禁止されている危険な薬でヒロポンの一種だ!」

インゲラ(20歳代後半)の場合
激しい腹痛に襲われ地域担当医のもとを訪れた。腹部のどのあたりが痛いか分からないほどの激痛だったが、診断は「ストレスと風邪」だった。
そんなモンか?と思ったけれど、とりあえずその日は帰宅。でも風邪とは明らかに違う、時々息が出来ないほど激しい腹痛は一向によくならない。
翌日、夫に抱えられ再び地域担当医のもとを訪れた。顔は黄疸の症状が出ている。病院へ検査に行きたいと告げるが「あなたのようなストレスの多い人によくあるのよ。たっぷり睡眠を取ればよくなるから。」と断わられる。しかし数時間後、この世のものとも思えない激痛に襲われ救急車を呼ぶ。救急隊に「凄い黄疸じゃないか!?どうして早く病院へ来られるよう地域担当医に手配してもらわなかったんだ!?」と言わる。病院に到着すると即緊急手術になった。原因は胆石。あと30分遅れていたら命が危なかったそうだ。病院の医師はインゲラの地域担当医を法的に訴えるようアドヴァイスしたが、面倒なのでやめた。

 どうもこの国の「総合医」さんはあまり腕のほうは確かじゃないようだが、、、日本のポリクリやってる医学生でももうすこしましじゃないだろうか?まったくいくら医療費が無料だからといってこんなええ加減な治療をされたら国民はたまったもんじゃない。。。

 どうですか?まったく信じがたいエピソードのオンパレード、、近頃の日本だったら一発で訴訟ものですね。
これでもあなたは総合医の診察をうけたいですか?厚生労働省官僚の諸君、君たちの子々孫々だってこんなレベルの医療を受けることになるんだよ?いいの? といった情報開示を徹底して行うのである。
厚生労働省の狙いは総合医制度導入による医療費抑制であることは間違いない。確かにこの制度を導入して、現在の開業医を全部組み込んでしまえば、、、、恐ろしいほどの医療費削減がなされるであろう、、
 (いろいろと批判の多いスーパーローテ制度だって、内科外科小児科産婦人科を必修にしているということは、いずれ「総合医」を制度化することを念頭においているのであろうことは想像に難くない。)

かかりつけ医(総合医)制度を採用している福祉最先進国といわれる北欧のデンマークの医療事情はどうなっているのか?

 さてお次はこれまた福祉先進国として名高いデンマークの医療事情をみてみよう。
では、同じくこれもデンマーク在住の日本人の一般市民のブログから引用させていただく。
http://denjapaner.seesaa.net/category/5218712-1.html

 この国も基本的に「医療は無料」である。それゆえに、総合医にゲートキーパーをさせているわけである。(いくら無料だからといって、安かろう悪かろう医療では困るのだが、、)

2007年11月13日
http://denjapaner.seesaa.net/article/66330405.html

医療費無料の現実と民間健康保険人気という歪み

国政選挙の投票日である。即日開票だが、結果が出るまではまだ10時間くらいあるだろうから、選挙についてはここでは触れない。落ち着いた頃、識者による選挙戦の分析などが出てくるだろうから、それを待ちたい。

選挙戦で何が興味深いかというと、各党のマニフェストである。何を実現目標として掲げているかを見ることで、「福祉国家の今」にどんな問題点があるのかが一望できると個人的に思う。争点は色々あるが、とくに今回挙がっている中で気に懸かったのは、医療制度と学校の教育環境の問題である。長くなるので、ここでは医療に関する争点を取り上げよう。

日本でも知られているように、デンマークでは医療は無料であるが、医薬は分業であるため、薬は薬局で購入することになる。歯科や耳鼻咽喉科といったごく一部の専門医を除いては、どんな体の不調であっても、まず診療所へ行き、自分のかかりつけ医に見てもらい、薬を処方してもらうか、診療所では手に負えないようなケースの場合には紹介状をもらって病院にかかることになる。つまり、かかりつけ医は担当の患者の健康情報に関して全てを管轄することになる。「病院にかかる」と簡単に言うが、現実には治療の順番が回ってくるまでに非常に長く時間がかかるため、待機期間中に亡くなる重病患者なども少なくないということで、政府は治療待ちの期間に対する保証を始めた。この保障に対する実効性等が、改めてまた与野党の福祉改革の争点として上げられている。以下、この治療待ち機関保障について、振り返ってみよう。

2002年の春に国会では病院法を改正することを決定し、2002年7月1日を持って自由病院選択制を取ることが可決された。かかりつけ医から公立病院に回されてきた患者は、8日以内に病院から治療までにかかる待機期間の見込みを知らせ、それが2ヶ月以上の見込みの際には、患者は民間の私立病院で治療をすることを選択でき、その費用は患者の住むアムト(県)が負担する、というものである。形成美容等の手術(費用も必然が認められない場合は、自費負担)、精神疾患、代替療法、実験段階にある治療、不妊・避妊治療等は、この待機期間保証の対象にはならない。また、アムトは2007年1月1日を以ってリージョン(地方)という大きな単位に改変されたため、現在は、病院はリージョンの管轄となっている。
この「治療待ち期間保証制」を土台として改正が重ねられ、2007年10月1日からは、原則として、期間保証が最長で1ヶ月(検査期間の最長2週間を除いた期間)と短くなった上、かかりつけ医が病院に紹介状を出した時点で、その病気に対する検査・治療を行うことができる国内の全ての公立病院と提携している民間病院から自由に選択し、かかることができることになっている。かかりつけ医は患者の病院選択について助言をすることができるほか、リージョンにもアドバイザーがいる。そのため、住んでいるところから遠いところに位置する病院での待機期間が短い場合には、交通費は自己負担となるが、大抵はそちらにかかることを選択することになる。癌やその他、生命の危険がある場合にはこの期間保証はさらに細かい規定があり、早期治療に取り組もうとはしている。しかしながら、この2007年10月1日の法改正でさらに寛容な保証が行われることで、癌治療だけでもさらに16億クローナ(400億円程度)の公費負担が余儀なくされると見込まれている(2007年9月30日 Berlingske Tidende)。
しかし、病室の数は限りがある上、医者、看護師が不足している状況にも関わらず、政府の規定のためにどんどん入院患者を受け入れざるを得なくなるとどうなるだろうか。…結果としては、病室が空かないまま病院の廊下にベッド置き、死を前にした癌患者がそこに寝かせられて入院生活を送る現状がある。2007年11月6日のPolitikenによると、フレデリクスベア病院の内臓疾患病棟では25人の患者が病室に、4人の患者は廊下に入院している状況が載っており、患者はその入院生活のプライバシーのなさ、先への不安などを語っている。
また、労働組合系のシンクタンク、Ugebrevet A4は、2001年の政権交代によって、現在の中道右派政権になって以来の民間病院の急成長振りをまとめている。疾病保険danmarkでは、すでに加入者は国民全体の4割にも当たる200万人を超えているし、保険会社TrygVestaは来年一年で100万人が民間健康保険に加入するであろうと予測しているという。それに加えて前述のように、公の治療費で民間病院で治療する患者も増えているのである。つまり、2001年の政権交代後の6年間で、
*4倍のデンマーク国民が民間健康保険に加入
*3倍の税金が民間医療セクターに投入
*2倍以上の患者が、税金を収入源とする公の治療費負担で、民間病院で治療
という現実が生まれたことがわかる。
新自由主義的政策の推進によって、公的システムに対する不信を募らせた国民が、結果的に民間に頼って受益者負担を甘受していること、そして結果的に「小さな政府」の方向にを進めているのが見て取れよう。また別の機会に投稿することになるが、現行政権下では大学の独立行政法人化も行われたし、近年の日本と共通した傾向が明らかである。こうした事情から、公的システムに対する不信と福祉充実を大きな争点として、今回の選挙が白熱しているため、今日は有権者たちが手に汗を握って、今後の国の行く末を見守ることになるのだろう。
*注:入院してしまえば治療費はもとより、食事なども無料で供される。そんな中で民間疾病保険が何をカバーできるのか疑問に思われるかもしれない。前述、疾病保険danmarkでは、保険タイプにもよるが、例えば一番身近なものだと、(18歳以上の成人は)治療費のほとんどが自己負担となる歯科治療、予防接種、眼鏡・コンタクトレンズ作成等に関しての補助金が支払われる。

 デンマークの医療事情の一端がうかがえるが、この国は医療は無料、であるがゆえに無理をしてきりつめようとしているわけである。
さて、日本臨床整形外科学会本田忠理事の「総合医」についてのご意見を引用してみよう。なぜ、官僚が「総合医」を導入したがっているのかについて、明解に解説されている。

われわれ一般開業医は主に慢性疾患をあつかっているわけで、医療費を削減する目的で、ここを合理化、包括化するためには 初再診料や外来管理加算、入院基本料等について包括化マルメる、という流れがある。その究極の「マルメ」が総合医なのである。
 総合医となった 開業医は簡単な慢性疾患だけ診察すれば良い。「ゲートキーパーとしての専門性」を高めればよい。総合医養成モデルである「日医」生涯教育制度でひろく単位をとればよい。何でもみる必要があるから、開業医の外来は臓器別に分ける必要はない。全て丸めて点数表は単純でよい。面倒な症例は全て病院にいる臓器別専門医にまわせばよい。
 複数科受診も制限できる。 総合医であれば何でもみることができるわけだから他科を受診する必要はない。病院、診療所でも他科を受診するなら諸費用は制限する(入院中の他科受診制限は著しい)
 診診連携を否定する。そもそもみんな総合医なんだから連携してもしょうがないからしない。 患者抱え込みモデルですから、複数科受診が極端に減る。というか、先のスウェ一デンの逸話にもあるように、総合医の承諾なしには専門医にはかかれないのである。

「総合医」のはたすべき役割について的確に指摘されている。

ところでわたしは「総合医」については完全に頭から 否定しているわけではない。
われわれの子供のころは、お医者さんといえばそれこそ風邪から結膜炎水虫骨折までなんでもみてくれた。標榜科目だって、「内科・外科・小児科・皮膚科・泌尿器科・レントゲン科」、、、、昔ながらの先生こそが「総合医」であり「家庭医」だったのである。まあ、そのころは医師の絶対数が少なかったこともあったのだろうが、、、これはこれでうまくいっていたのだろう。国民皆保険制度が完成して、ある程度医師の数が充足してくると、患者さんの専門医志向もたかまった結果、こういった「町の何でも見てくれるお医者さん」は少なくなってくる。しかし、いまでも貴重な存在であることはまちがいない。

 だからわざわざ制度として「総合医」なるものを導入しなくともいまは「町の何でも見てくれるお医者さん」=「総合医」がちゃんといてうまくいっているのである。
ひるがえってみるに、村の診療所の医師にさえ困っている人口数千人数百人の僻地に各科臓器別専門開業医がどれほど必要だろうか? なんでもみてくれる「総合医」はこのような医師がいない僻地にはかけがえのない存在となるだろう。
したがって、「総合医」のコンセプト自体は全否定されるべきではない。

 また、国家試験に何度も落第して結局やめてしまうような程度の低い医学部卒業生も医師不足のいまでは貴重な人的資源である。彼らを活用するのに、看護師程度の国家試験で合格させて、「総合医」=準医師、二級医師?(建築士でいえば、二級建築士)として使えるかもしれない。 それこそ問診だけの「総合医」なら十分勤まりそうである。彼らに僻地への勤務を義務付けることを条件に医師免許を付与する、という方法も考えられる。(あとで紹介するように、すでにドイツでは医師の強制配置は実施されている。)

 わたしは、いまの保険医療制度を変えることなく、数ある診療科目の中に、「総合科」あるいは「総合診療科」を付加することには賛成である。プライマリケア、という概念はすでに広く受け入れられている。あとで紹介するドイツでは、このような体制になっているようだ。

 なんでも見てくれる「総合医」は現在の医療でもある面では必要であることは認める。しかし、ろくに医師がいない僻地ならともかく、いまの大都市圏、近くに臓器別専門医開業医がごろごろいるこの日本国で、世界に冠たる国民皆保険制度を根本から改悪してまで、「総合医」なるものがそれほど必要とされるだろうか?

 まして、スウェ一デンみたいなレベルの低い劣悪な「総合医」は論外であり、一国民としても御免蒙りたい。そして政府が導入をもくろんでいるのがまさにこのスウェ一デンみたいな「総合医」制度なのであることが最大の問題なのである。これこそが、わたしがこの制度の導入に反対する理由なのである。
ところで、米国では「総合医」ならぬNP(ナースプラクティショナー)や、
PA(フィジシャンアシスタント)が台頭してきている。その結果、アメリカでは医師の社会的地位が急速に低下している。

 医療分野のインターネットから引用してみる。
【チーム医療維新! 日本のNP、PA制度を考える】http://www.teamiryou.com

過去10年間、アメリカの一般勤労者の収入は約25%増加しているが、その間、医師の収入は25%も減少してしまっている。

そしてその要因は恐らくNP(ナースプラクティショナー)や、PA(フィジシャンアシスタント)の台頭であると考えられる。

NPやPAは開業医程度の仕事をこなす専門職だが、彼らの収入はNPで日本円で750万円程度とかなり少ない。
日本の開業医の年収が約2800万円なので、日本のおよそ4分の1程度の賃金で働いていることになる。
そしてNPと医師の実力はほとんど変わらないため、彼らがアメリカの医師の収入を押し下げていると考えられる。

したがって財政状況の厳しい日本は是非ともこの制度を取り入れて、医師の収入を少なくとも今の3分の1程度にまでは確実に下げるべきであろう。

ちなみに3分の1程度にまで減らせば、年収は600万円程度。
ドイツの医師とほぼ同じ年収となる。

さてナース・プラクティショナーとはいったいどのようなものなのか、というと 以下に「Wikipedia」より引用してみる。

ナース・プラクティショナー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/ナース・プラクティショナー

ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner, NP )とは、主にアメリカ合衆国においてみられる、上級の看護職である。一定レベルの診断や治療などを行うことが許されており、臨床医と看護師の中間職と位置づけられる。
アメリカ合衆国においては、全50州が、ナース・プラクティショナーによる医療行為を認めている。
医師の補助のほか、医師のいない過疎地等においては自ら診療行為の主体となっている場合もある。ナース・プラクティショナーは、初期症状の診断、処方、投薬などを行うことが出来るが外科手術などは行うことが出来ない。
同国では、医療費、また、医師の給与が高額なため、ナース・プラクティショナーの導入には医療コストの削減という側面もある。
ナース・プラクティショナーは、看護師として一定以上の職務経験を積んだものが専門職大学院において必要な学位を取得し試験に合格することにより、この資格を得ることができる。
同職は州単位の規制によって規定されており、ナース・プラクティショナー自らによる診療所の開設は、自己の責任においてこれが可能である州、提携関係にある医師の監督下において可能となる州などがある。
ナース・プラクティショナーの専門領域は、全ての州で認められているウィメンズヘルス(女性の健康)、小児、高齢者、精神、急性期の5つの領域のほか、救急、家族、新生児などの領域がある。
<日本の状況 >
日本の医師法は、医師・歯科医師以外が診断や薬剤の処方などを行うことを認めておらず、現状ではナース・プラクティショナーに相当する職種は存在し得ない。
2008年(平成20年)4月、大分県立看護科学大学大学院の博士前期課程において、老年及び小児のナース・プラクテショナーの養成教育が始められている。

(以下「チーム医療維新! 日本のNP、PA制度を考える」より引用)
http://www.teamiryou.com/アメリカの診療チーム

【アメリカの診療チーム】
アメリカには、医師以外にも高度の技術を持ち、独立して患者を診ることのできる医療職があり、non-physician clinician(非医師高度診療師), 又はmid-level provider(中レベル診療師) などと呼ばれている
この範疇には助産師、PA、麻酔看護師、及びNP(ナースプラクティショナー)などが含まれ、大抵は医師の監視下で、もしくは医師と協力しあいながら、薬を処方したり、診療をしたりする。
(NPと助産師に限っては、州によっては医師から全く独立して診療行為を行うことも可能である。)
CNS(専門看護師)は「独立して」診療行為を行うというよりは、看護のエキスパートであるので、この非医師高度診療師に含まれたり含まれなかったりする。
RN(看護師)は、これらの診療師の下に位置し、その下にLPN(準看護師)、そしてその下にメディカルアシスタント(Medical assistant. Certified nursing assistant、patient care associateなどとも呼ぶ)。
メディカルアシスタントは、高校を出た人が、わずか数ヶ月のコースに通えばなれる。採血や、バイタルサイン、尿測などを担当し、看護師をサポートする。

[診療チーム例]
ここから先は、個人的な体験などをもとにした情報なので、一般化して言えるかどうかは分からないが、参考までに記述しておく。
1)私の働いていたスラム街にある診療所では、医師やNPが10人、メディカルアシスタントが12人くらい、それに看護師が1人だった。(普通は、もうちょっと看護師の割合が多いと思う。)
ちなみにそこでは、メディカルアシスタントは年収250万円、看護師が550万円程度、NPが 700万円、医師が1200万円以上だった。
看護師はメディカルアシスタントの統括及び訓練や、患者トラブルの解決、サンプル薬の管理、保険会社との交渉、電話トリアージなどなどが仕事だった。
2)日本の看護師で、現在アメリカでCNS/NPになる勉強をしている方のブログに、「日本ではナースの仕事とみなされていて、アメリカではナースがしないこと」の記述がある。
州や病院によって違いがあるので一概に言えないものの、興味深い。

診療看護師(NP=ナースプラクティショナー)について。
「留学デスクZT」より。 カナダでナース・プラクティショナーとして
活躍されている橋本次郎氏による報告です。以下、一部抜粋します。
http://www.ryugaku-zt.jp/seminar_report/

『(カナダでは)プライマリー・ケア制度の充実で、軽度の病気は病院ではなく家庭医や家庭ナースプラクティショナーのいるプライマリー・ケアクリニックで診察、 治療されます。』
 『(カナダの)BC州のナースプラクティショナーは120以上の医学診断が独自にでき、 薬も麻薬系鎮痛剤、ベンゾダイアゼピン系鎮静剤、専門治療薬(たとえば、抗がん剤) などの一部を除きすべての薬を処方できます。したがって、家庭医の6〜7割の仕事を することができると言われています。また、単純切開や縫合もできます。』

 ナースプラクティショナーについてご理解いただけただろうか?
わたしは、財務省厚生労働省官僚は「総合医」の導入に成功したら、次はこのナースプラクティショナーの制度化を目論んでいる、と喝破する。

 インターネットでナースプラクティショナーについて下記のような書き込みがあったので、ついでに紹介しておこう。ここは、「僻地医療の自爆燃料をかたる」という2CHでは有名なスレである。興味のある方はアクセスしていただきたい

700 :卵の名無しさん:2010/10/03(日) 11:19:32 ID:3Od151JD0
診療看護師(NP=ナースプラクティショナー)について。「愛媛地域糖尿病療養
指導士研修委員」から、「NPクリニックの糖尿病管理レベルはレジデントと同様」
http://ecde.m.ehime-u.ac.jp/report/14 (一部抜粋します)
 『Kelley 博士らが医療センターでNPクリニックと内科レジデントのケアの
レベルを血糖コントロールで比較したところ、NPクリニックが提供したケアの
レベルは、内科レジデントが提供したケアのレベルと少なくとも同等だった。
一部の項目では、むしろ内科レジデントが提供したケアより勝っていた。』
701 :卵の名無しさん:2010/10/03(日) 11:39:32 ID:2wMFlCqFP
そもそも日本のナースの程度は米国に較べるべくもない…
702 :卵の名無しさん:2010/10/03(日) 12:07:36 ID:Kip0kU6u0
診療したり処方したり、小手術したり。いくらでもやってもらってかまわん。
ただし権利を与えるなら責任も与えてやってくれ。
ごちゃごちゃいじくり回したあげく、医者の責任ですっ、なんて投げないなら、NPも賛成。

703 :とうりすがりのものです:2010/10/03(日) 14:15:52 ID:wBYhJrkb0
>701
>そもそも日本のナースの程度は米国に較べるべくもない…
歴史が違う。占領当時の65年前、大学卒業の看護師が2万人いた。USA 人
口2億人。黒人公民権運動が盛り上がる遥か前。
今の USA の(老人)医療システムは、Medicare Part I,II,III:で決められ
た Doctors fee, Hospital fee の分離があってのこと。当然薬剤支払いも別勘定。日本は、Hopital fee のみ。開業医中心の医療。
介護保険で老人医療をシフトする目論見。ドイツでは失敗経験済み。
患客が介護離れする。アメリカ合衆国住民の医者の悪口は、
「医者が、何でもかんでも看護婦に押し付ける。」というのが、その証拠

 まあ不愉快な情報で申し訳ないが、現在の米国の姿は将来の日本である。
先述したように、医師会の反対を押し切って、「総合医」が導入されたら、こんどはNP(ナースプラクティショナー)や、 PA(フィジシャンアシスタント)の制度化だろう。いまでもナースに開業権をもたせようという動きはすでにある。
NPやPAは開業医程度の仕事をこなす専門職だが、 彼らの収入はNPで日本円で750万円程度とかなり少ない。

 日本の開業医の年収が約2800万円なので、 日本のおよそ4分の1程度の賃金で働いていることになる。 」
こんな連中が風邪引きや頭痛を診るようになるわけである。それも安い御代でね。
整形外科医といわゆる接骨院整骨院との確執は皆さんご存知だろう。
われわれは整形外科医は長年柔道整復師−接骨院整骨院と戦ってきた。
これはひとえに診療報酬の奪い合い、といった面はもちろんあるが、医師でもない連中に患者さんを診断治療させてはいけない、という整形外科専門医としての使命感があるがゆえである。
これと同じような構図での争いが今度は内科医、いや制度化された「総合医」とNP(ナースプラクティショナー)や、 PA(フィジシャンアシスタント)との間で勃発する可能性が高いと思われるのである。
とにかくまずは、みんなで一丸となって「総合医」導入を阻止しましょう!

 われわれ整形外科専門医と同じく、専門性の高い眼科耳鼻科泌尿器科皮膚科、各科専門医の先生方にとっても他人事ではないはず。一緒に戦線に加わってください!

 さて、先進国ドイツでは「総合医」はどうなっているのかがうかがえる記事を紹介しよう。

『ドイツにおける医師配置の規制について』
http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/siryou/zaiseib210511/01.pdf

○ 公的医療保険における保険医(開業医)の配置規制

・ドイツにおいては、従来より、各州の保険医協会と保険者団体が
協力して策定する保険医需要計画に基づく、保険医(開業医)の開業規制が存在

・保険医需要計画では、各地域における人口密度等に応じて区分した
10の地域区分(需要サイド)と、14の診療科(供給サイド)ごとに、
保険医として開業できる医師の定員を定めており、この定員を10 %以上上回る
地域・診療科では、原則として新規開業は不可
(各地域・各診療科の定員は、開業医1人当たりの住民数をもとに機械的に設定)

(注1)10の地域区分
全国を地域開発計画上の10区分(大規模人口稠密地域・4段階、
人口稠密化地域・3段階、人口密度の低い周辺地域・2段階、ルール地方)に分類。
(ドイツ全土が約400の地域に分類される)

(注2)14の診療科
麻酔科、眼科、外科、内科、産婦人科、耳鼻科、皮膚科、小児科、神経科、
整形外科、精神科、放射線科、泌尿器科、家庭医

○ 2007年の医療保険制度改正における新たな医師数のコントロール方策

・保険医の過剰地域及び過少地域には、通常の1点当たり単価から
減額又は増額された単価が適用されるシステムが導入される(2010年より施行予定)

この家庭医、というのがいわゆる「総合医」にあたるものらしい。それにしては各科専門医の開業は許されているようなので、まだこの国は「総合医」ですべてまかなうまでにはいっていないようである。
(ドイツでは医者が失業してTAXIの運転手をやっているとか噂を聞いたことがあるが、さて実態はどうなんだろうか?とおもっていたらネットでこんなものを見つけた。 これじゃあねええ、、ドイツの医者も大変だわ、、、)

【ドイツの勤務医の年収は、約480万円】
『Germany’s poor doctors』

『Annual Average Earnings of Hospital Doctors in 2002』

<おわりに>

 私は平成3年にコットンビルで開業して来年で丸20年になる。
ここは各科専門医が集合した医療ビルである。
わたしは整形外科専門領域の患者をみながら、血圧に問題のある患者は内科循環器科専門医である林先生に、白内障患者は眼科専門医村上先生、腰痛の原因が腎臓結石が疑われる患者は泌尿器科専門医北野先生に紹介してきた。

 もちろん、患者さん自身がすでにかかりつけの先生を持ってる場合はその先生に紹介状や照会状をかいて連絡をとりあってきた。
人工関節などの手術が必要な患者は、大阪府立急性期総合医療センターなどのしかるべき専門病院へ紹介してきた。
最近では、診療情報提供書の数は紹介状、照会状、検査紹介状すべてをふくめると毎月少ないときでも50通、多いときでは100通を越える。

 診診連携、病診連携をつうじて患者さんがそれぞれの専門を極めた専門医師の診察をうけることが可能となることで、地域医療にそれなり貢献してきたし、患者さんにとっては有益であったと信じる。
わたしの専門である、整形外科領域でも、幼児のころからみていた患者さんがもう子供さんを抱いて来診するようになってきた。

 中年期に腰椎椎間板ヘルニアでみていた 患者さんが、骨粗鬆症を患う年齢になってきている。
いわば専門医のかかりつけ、かかりつけ専門医、という構想を実施してきたつもりである。それが患者さんの利益になると信じてきた。

 最近はコットンビル以外の内科など他科の先生からの整形外科疾患の患者さんの紹介も増えてきている。
「総合医」はこういった診療所間の連携を、そして病診連携を根本から完全に否定する愚劣な構想であり絶対に許しがたい。
そしてわれわれ専門医を冒涜するものである。
「町医者は風邪ひきやギックリ腰をみておればいい。余計なことをやって医療費を増やすな」。。なんという傲慢不遜!、、、木っ端役人にいわれたくないですね。おまえらこそ医療のことは医者のいうことを黙って聞いとけ!といいたい。
まあ「総合医」導入は簡単には事ははこばないだろう。

 たとえば、コットンビルの前で、「XX総合医クリニック−なんでも格安で見まっせ!」なるものが開業して、はたして患者さんがいくであろうか?
まあ、最近の患者さんはよく勉強しておられるから、「総合医」なんていかがわしい名前の医者のところに体をあずけるとはとてもおもえないが、、
それだけに、「総合医」導入をもくろむ関係者は診療報酬の制度上での強制措置を当然とることになるだろう。
(「総合医」がいやだったら自費でやってね、ということ)

平成OO年
厚生労働省告示XX号
  健康保険法を次のように改定し、平成OO年4月1日より適用する。
基本診療料
  総合医保険医療機関とは、厚生労働省が認定する「「総合医」の資格を有する開設者が登録患者を診療する無床の医療機関である。
  総合医保険医療機関は、診療にかかった費用を保険請求をすることがができる。基本診療料は、。。。。。。。。。。。。。

 てな感じですかな?
わたしは、いままで述べてきた理由から、世界に冠たる国民皆保険制度を根本から変革してまで「総合医」を導入することには絶対に反対である。 
しかし、政府が医療政策改悪として本気で乗り出してくれば、そうなれば万事休す、である。後期高齢者医療制度創設時のドタバタをおもいだしていただきたい。結局政府の企画したとうりにこの制度は創設された。
この「総合医」に関しては、前回の轍を踏まないようにしなければならない。そのために、日本医師会およびわれわれ会員は一丸となって、この愚劣な「総合医」を葬るよう尽力しようではないか。後世に禍根を残さないために。。もちろん マスコミ、国民と一体になって。
馬場谷新会長体制になって、わたしが今春から提唱してきた西成区医師会財政危機克服のための財政改革検討委員会も設立された。ここ数年で財政状況は改善するだろう。わたしが西成区医師会 病診連携担当理事として手がけた、第25回第11ブロック病診連携研修会も無事成功裏に終わった。
医師会理事としてのわたしの最後の仕事はこの「総合医」構想の撲滅であるとおもっている。いわば「最後の聖戦」といったところであろうか?
具体的な行動としては、先述したように、まずは大阪府医師会から日本医師会にはたらきかけて、「総合医」導入が妥当かどうかを検証する委員会を設けることから始めるよう提唱することから始めたい。
また、彼らがそのために考えている方策などの情報を収集することも肝要であろう。

 どうか医師会員諸兄もこの拙文をお読みいただき、危機感を共有し、ともに戦おうではないか!厚生労働省財務省官僚の国民医療を破壊するたくらみを粉砕しようではないか!
なによりわれわれの子々孫々がこれからも良質な医療を受けることができるように、、

 最後に、表題の「総合医」は医療費抑制の切り札?それとも、医療崩壊をもたらす悪魔の使者か?への答えは、双方とも正解、である。

<参考文献>

中央社会保険医療協議会 総会 (第178回) 議事次第
http://wwwhaisin.mhlw.go.jp/mhlw/C/?c=155439

○ 医薬品の薬価収載について
○ DPCにおける高額な新規の医薬品への対応について
○ 在宅自己注射について
○ 後発医薬品に係る検証調査票について
○ 医療費の動向について

資料(総−5−1)(PDF:181KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qtmg-att/2r9852000000qtsv.pdf

【調査結果のポイント】
○ 平成21 年度の医療費は、前年度に比べて約1兆2千億円増加し、過去最高
の35.3 兆円となった。医療費の増加は7年連続。【表1-1】
○ 医療費の伸び率(対前年度比、以下同じ)は3.5%(稼働日数補正後3.6%)
で、伸び率は概ね従来と同水準(3%台)。【表3-2】
○ 受診延日数(延患者数に相当)の伸びは▲0.6%、1 日当たり医療費の伸び
は4.1%、となっている。【表4-2、表5-2、参考2】
近年、受診延日数(延患者数に相当)は減少傾向にある。一方、1日当たり
医療費は増加しており、医療費総額の増加につながっている。
○ 平成21 年度の医療費、1日当たり医療費と受診延日数の伸び率を、大きな
制度改正や診療報酬改定の影響を受けていない平成19 年度の伸び率と比較し
てみると、その差は、医療費0.4%ポイント(稼働日数補正後0.6%ポイント)、
1日当たり医療費0.0%ポイント、受診延日数は0.3%ポイントとなっている。
【下の(表)参照】

資料(総−5−2)(PDF:203KB)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qtmg-att/2r9852000000qtt4.pdf

○今後の議論の進め方について
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000qtmg-att/2r9852000000qttf.pdf

1)「初再診料や外来管理加算、入院基本料等」について
・1号側は、8月25日提出の意見において、「基本診療料のあり方全体を議論
し、次期改定に反映していくために、論点整理を早急に行い、検討課題を絞
り込む必要がある」とし、
・2号側は、8月16日の意見において、「診療報酬体系のあり方の本質に関わる事項」として挙げられており、「優先的な議論をお願いしたい。」とされて、優先して議論すべき項目として挙げられている。
・ただし、2号側からの「中医協答申(平成22年2月12日)附帯意見等に基づく時期診療報酬改定に向けた今後の検討課題に関する提案」(平成22年5月26日)に対し、1号側からの「中医協における今後の検討課題に関する1号側(支払い側)の意見」(平成22 年6月23日)の中では、「基本診療料のあり方や内容等について議論することは賛成だが、診療側の提案では、基本診療料の中で「技術」と「モノ」の評価の分離、キャピタル・コストや人件費等の積算根拠の明確化まで含めて具体的に検討すべきとされている。
しかしながら、これらの項目については、技術料設定の考え方や基本診療料についての考え方など、さまざまな検討課題が考えられるため、検討の対象を絞り込むなど、慎重に検討すべき。」とされており、意見の異なる部分もある。
以上より、まず、議論の方向性や焦点,検討の進め方等について、論点整理を行うこととしてはどうか。(総−6−1−2)

2)「医療と介護の連携」について
検証部会、慢性期調査分科会で行われる予定の調査、検討にあわせて議論することを基本とするが、社会保障審議会介護保険部会、社会保障審議会医療保険部会の進捗状況に応じて、担当課等からのヒアリング等を行い、必要な議論行っていくこととしてはどうか。