Story 骨粗鬆症編 慢性関節リウマチ 小児整形編 変性疾病編 スポーツ障害編 一般整形外科編
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骨がおれた!骨折かも知れない?

  1. はじめに
     運動器、すなわち骨関節筋肉靭帯などの外傷は数多くありますが、今回は骨折にしぼって、みなさんが家庭内やあるいは出先で骨折に遭遇したときに役立つようなお話にしたいと思います。

  2. 骨折の診断
    1)どんな骨折が多いの?
     ある病院の整形外科で調べた結果、全骨折中、41%が上肢、44%が下肢、脊椎などの体幹部が15%でした。
    頻度順では、@下腿骨折(腓骨や脛骨など)A上腕骨骨折B前腕骨骨折(橈骨や尺骨)C手指骨骨折D腰椎骨折 でした。重症例では関節の脱臼をともなっています。受傷後6時間以内に救急受診した症例が55%を占めます。また男女比では4:1、年齢別では活動性の関係から20代が最も多かった。

    2)原因は?
     労災事故よりも交通事故やレジャー中の発生がめだちます。前二者はともかく、レジャー中はやはり気が緩むのでしょうか。

    3)小児の骨折の特徴は?
     骨膜という骨を覆って支持組織や栄養供給組織としての役目をもつ膜が大人に比べて強靭ですので、たとえヒビがはいってもずれたりすることがすくないという特徴があります。また当然損傷組織修復能力も優れており、骨癒合に要する期間もおとなより短いです。

    4)高齢者の骨折にはどんな特徴がありますか?
     骨が脆くなる、骨粗鬆症という要素がからんできますので、若年者とはかなり違った骨折、たとえば、大腿骨頸部内側型骨折、上腕骨頚部骨折、脊椎圧迫骨折、 橈骨骨折などが多くを占めます。
     また当然損傷組織修復能力が劣っており、骨癒合に要する期間も長いです。また関節の拘縮もおこりやすいので注意が必要です。

    5)実際に遭遇したときの処置はどうしますか?
     みなさん自身や家族が骨折されたときに、どう判断し、処置をするか、についてお話します。

     @まずたいていは目の前でおきますから、どのような状況でおこったか、すなわち受傷機転を正確に把握してください。
    高齢者なら、手を突いてこけたのか、しりもちをついてこけたのか、などです。また傷があるのかどうか、あるのなら開放創なのかどうか、出血の程度はどうか?

     Aそしてまず全身のチエックをします。脈拍や血圧、顔色、息切れなど、呼吸循環系をまずみます。骨折部から思わぬ大出血がおこっていますと短時間でショック状態になることもあります。
     ここで大事なのは頭部を打撲していないかどうか、です。脳震盪などの意識障害をみます。

      B次に神経症状をみます。歩けるかどうか、歩けないならそれは痛みのせいなのか、または脊髄に損傷があって麻痺があるせいなのか? といったことを見ます。具体的にはつねってみて知覚を、四肢を動かすようにいってみて動くかどうか、などで判断します。
     局所の状態、腫れ、近位関節の運動時痛などをみます。たとえば、手関節が異常にはれていて、フォーク様の変形がみられたら、橈骨骨折の可能性が高いです。また骨粗鬆症を合併しているお年寄りがしりもちをついて股関節が痛くて動かせなくなった、という場合はまず大腿骨頸部骨折を疑います。

     C以上を正確に把握して、呼吸循環系および神経系に異常がないと判断されたなら、あわてることはありません、まず落ち着いてください。
    そして該当箇所にシーネがあればベストですが、添え木になるもの、おりたたみ傘のようなものでも結構ですから、とりあえず動かないようにあてて、病院にむかってください。動かなくなればまず痛みはとまります。この場合は特殊な場合を除いて緊急手術の必要性はまずないと思っていただいて結構です。実際骨折の大半はギプス固定で完治します。
     万一救急病院で診察していただいて、手術が必要といわれても、緊急に必要なのかどうかよく説明を聞いてください。
    もし緊急性のない場合であると説明をうけたなら、応急処置をしていただいて、かかりつけの先生に相談して、しかるべき病院を紹介していただくなどの時間的余裕ができます。
    また受診した救急病院に整形外科専門医がいなかった場合、手術そのものが本当に必要なのかどうかをセカンドオピニオンとして、あらためて整形外科専門医を受診することをお勧めします。

     Dもし顔色が蒼白、意識が不鮮明、あきらかに手足が麻痺した、といった呼吸循環系および神経系に異常があると判断された場合は取り乱さない程度に、おおいにあわててください。すぐに救急車を呼んで緊急手術を含むしかるべき処置のできる病院に一刻も早く搬送してください。

    ※骨折の具体的な治療について今回ははぶきます。

  3. まとめ
     ほとんどの骨折は、緊急性がなく、手術をおこなわない、ギプス固定などの、非観血的整復固定術などで治療します。
     緊急を要する、Dのような場合は稀ですので、骨折を疑った場合でも、とりあえず冷静になって、判断し行動することが肝要です。
     骨粗鬆症の骨はもともと折れやすいのですが、原因もなく折れでしまう骨は背骨・腰骨ぐらいで、手足の骨はほとんどの場合、転倒により折れるのです。

●転んで打ちつける部位によって骨折型が決まる●
多くの人は転ぶ際に手のひらか肘をつく、または膝やお尻をつきます。
手のひらをつきますと手首の骨折が生じ、肘をつきますと肩近くの腕のつけ根に骨折が生じます。膝やお尻をつきますと大腿のつけ根に骨折が生じ、このタイプの骨折では立って歩けなくなるため、ほとんどの人は入院が必要となります。
手首の骨折 腕のつけ根の骨折
フォーク様の変形 固定法
お尻や膝をついたり、大腿を捻るなどをして、大腿のつけ根に痛みが走り、立てない、歩けない場合は大腿のつけ根の骨折が疑われます。
仰向きに寝かせて観察しますと痛む側の足が外を向いて短くなっている、大腿のつけ根が横方向に広がっているなどを認めます。この場合には抱えたり、車椅子に乗せたりして手厚く介助しながら医療機関に連れていって下さい。
大腿のつけ根の骨折の臨床像


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