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第17話  骨粗鬆症の薬物療法(各論その7 エストロゲン製剤)

 骨粗鬆症の薬物療法について述べてきましたが、今回御紹介するエストロゲン製剤〔薬剤名:エストリオール・結合型エストロゲンなど〕で最後となります。
エストロゲン製剤は、いわゆる女性ホルモンとして、婦人科の領域でよく使われております。女性の場合、閉経期以後におこる骨量低下の原因として、エストロゲンの減少が深く関与していることから、このホルモンを補充することで、骨量の減少を防ぎ、骨粗鬆症の治療に応用する試みが行われてきました。この薬剤は、血中カルシトニン値を上昇させて骨吸収を抑制する作用と腸管からのカルシウム吸収を促進させる作用があると考えられております。(カルシトニンについては第14回と第15回を参照願います。また、カルシウムについては第10回と第11回を参照願います)また、破骨細胞に直接作用して、骨吸収を抑制するらしいということがわかってきました。この薬剤は、確実な骨量増加作用がありますが、女性ホルモンであるが故の副作用としていくつかの問題があります。軽度なものとしては、腹部膨満感、悪心などの消化器症状、不正出血や乳房痛などです。最も深刻な問題は、子宮がんと乳がんの発生するリスクが増加することと、血栓症です。したがって、この薬剤を投与する場合は、婦人科および内科的な慎重な管理が絶対条件です。この薬剤に限りませんが、医師はよく患者さんに説明し、また患者さんもよく理解したうえで治療計画をたててゆくことが必要です。さて、この連載での私の担当は今日が最後です。皆さんの骨粗鬆症のご理解について拙文が少しでもお役に立つことができましたなら望外の喜びです。"幸せな老後は、強い骨から"という私の整形外科医としてのモットーを最後にご紹介してお別れのご挨拶とさせていただきます。ご愛読ありがとうございました。

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