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第15話  骨粗鬆症の薬物療法(各論その5 ビタミンK)

 骨粗鬆症の薬物療法一今回はビタミンK製剤についてお話します。
ビタミンKは、およそ70年ほど前に、血液を正常に凝固させる因子のひとつとして発見されました。それから.30年を経て今度は骨を形成するある種のタンパク質の生成に不可欠であるということが確かめられ、再び注目をあびることになりました。骨基質中には2種類のタンパク質が存在します。これらのタンパク質はリン酸カルシウムと結合することで、骨を形成するわけですが、このタンパク質はリン酸カルシウムとが結合する過程で、ビタミンKが重要な役割を演じていることがわかったのです。また、1)重度の骨粗鬆症患者では、ビタミンKの血中濃度が正常者に比べて低い値を示す、2)これらのタンパク質の血中濃度が低い群は、正常群にくらべて骨折しやすい、などの事実が明らかとなってきました。また、最近では、骨を壊して吸収する細胞である、破骨細胞の活動を抑制するという報告があり、ビタミンKが骨の形成のみならず、骨吸収にも関与していることがわかってきました。ビタミンKは、わかめや昆布、納豆などに多く含まれます。今までに述べてきましたように、食生活で骨粗鬆症に留意した献立を考える上で参考にしてください。
 さて、ビタミンK製剤は近年骨粗鬆症の治療薬剤として臨床の現場に登場してきております。(薬剤名:グラケー)一回1錠15mgを、一日2ないし3回食後に服用します。生体内に存在するビタミンKですので、安全性は高い薬剤ですが、時に軽度の腹部不快感、便秘をきたすことがあります。ただし、ビタミンKは抗凝固剤であるワーファリンの作用をブロックしますので、心臓弁膜症や不整脈などで、循環器内科医からワーファリンを処方されて服用しているかたには投与禁忌ですので、十分な注意が必要です。医師はこの薬剤を処方する際には、既往症とワーファリンを服用してないことを必ず確認しております。この点さえ留意すれば安全で使いやすい薬です。私は活性型ビタミンDとよく併用します。

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