Story Top 10 11 12 13 14 15 16 17

第10話  骨粗鬆症の薬物療法(各論その2 カルシウム剤 後編)

1 カルシウム剤(薬品名アスパラカルシウム、乳酸カルシウム等)
 骨粗鬆症では、骨の形成と吸収のバランスが何らかの原因で乱れたため、骨を壊すほう、すなわち骨吸収のほうに強く傾きます。その結果、骨を形成するカルシウムが減少し、骨量の低下と共に、骨がもろく弱くなってゆきます。したがって、骨粗鬆症の治療は、減少したカルシウムをまず補う事から始めます。
 カルシウムを摂取しますと、腸管からのカルシウムが増加することで、ある種のホルモンの働きを介して、骨の吸収を抑制する結果、骨量が増加します。特に食事からのカルシウム摂取量が少ない場合に有効といわれております。以前食事療法のところで説明しましたが、乳製品からカルシウムを多く摂取する欧米人にくらべて、日本人の場合、カルシウムの摂取量が少ないので、特に有用です。(ちなみに日本人成人の場合、一日に必要なカルシウムの摂取量は800-1000mgですが、現状は国民一人あたりの平均摂取量は550mgであり、この目標を大きく下回っております)また、カルシウムには骨折を予防する効果があることが明らかとなっております。
 ただし、いずれの効果も、カルシウム単独よりは、他の薬剤と併用することで、より高い効果がえられます。特に次回にとりあげる活性型ビタミンDは、腸管からのカルシウムの吸収を促進することから、カルシウムとよく併用して投与されます。カルシウムの副作用としては高カルシウム血症が最も重要です。血液中のカルシウム濃度が高くなり過ぎたため、不整脈などの心臓障害をきたし、時には生命に危険をおよぼすことがあります。特に活性型ビタミンDと併用したとき時や、カルシウムの排泄が低下している腎機能障害患者に用いる時は、定期的に血液・尿検査をするなど、慎重に経過を観察する必要があります。ほかには胃腸障害、便秘、尿路結石などがあります。

←back next→