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第12話  骨粗鬆症の薬物療法
(各論その3 骨量をふやす活性型ビタミンD 後編)

 前回活性型ビタミンDが、腸管からのカルシウム吸収を促進し、骨吸収を抑制し、骨量を増加させることで、骨粗鬆症の治療に広く用いられていることをお話しました。この薬剤はわが国で最も古くから骨粗鬆症の治療に用いられており、安全性は確立されていますが、副作用として高カルシウム血症と高カルシウム尿症に留意する必要があります。前者は、血中カルシウム濃度が高くなり過ぎた場合で、食欲低下、意識混濁、発熱、多尿などの臨床症状があらわれます。ひどい易合には、不整脈などの心臓障害をきたして生命に危険が及ぶこともあり、腎機能障害のある患者さんや、腎機能が低下している事が多い高齢者では特に注意が必要です。後者は、尿に排泄されるカルシウムが増加した場合で、尿路結石がでやすくなるため、尿路結石の既往歴のある患者さんや、腎機能が低下した患者さんには注意が必要です。これらの副作用は、定期的な検血・検尿検査で早期に発見できますし、通常の投与量でおきることはまずありませんので、あまり心配する必要はありません。さて、最近の研究で、活性型ビタミンDは、これまでに述べてきました、カルシウム吸収に関する作用だけでなく、骨を作る細胞に直接働きかける作用があることがわかってきました。これは、骨粗鬆症の他の薬剤にはあまり見られないことから注目されております。また、活性型ビタミンDは、細胞内にとりこまれたあと、ある種の遺伝子に働きかけることで薬理作用を発揮することもわかってきました。現在これらの活性型ビタミンDの働きはさらに詳しく解析されております。その結果をもとに、より効率よく、かつ強力に骨吸収を抑制し、骨量を増加させる薬理作用のある活性型ビタミンDの誘導体の開発が進められており、臨床の現場に登場する日も近いと思われます。

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