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第16話  骨粗鬆症の薬物療法
(各論その6 イブリフラボン製剤とビスホスホネート製剤)

 骨粗鬆症の薬物療法一今回はイブリフラボン製剤とビスホスホネート製剤の2つについてお話します。
 まず、イブリフラボン製剤(薬剤名:オステン)ですが、これはある種の植物の成長因子のひとつを基に化学合成されました。日本では1988年に厚労省が許可して以来、臨床の現場で用いられてきました。この薬剤は、骨吸収と骨形成の両方に作用すると考えられます。骨吸収の抑制作用としては、前にお話しました、骨吸収を抑制するホルモンである、エルカトニンの分泌を促進させることで発揮されると考えられております。また、臨床試験で、老人性骨粗鬆症患者の骨量を増加させる作用が確認されました。この薬剤もほかの薬剤と併用されますが、活性型ビタミンDやビタミンKとの相性が良いとの報告があります。副作用は、主に胸やけ、下痢、便秘などの胃腸症状ですが、ほとんどは軽症です。ただし、女性ホルモン製剤、抗凝固剤、気管支喘息の治療剤の中には、この薬剤と相互作用をきたすものがあり、医師は処方の際に慎重を期する必要があります。
 次に、ビスホスホネート製剤(薬剤名:エチドロネートなど)についてお話します。この薬剤の基本的な薬理作用は、骨吸収の抑制です。体内にとりこまれたビスホスホネート製剤は、速やかに骨を形成する骨塩であるハイドロキシアパタイトと結合します。そして、骨を吸収する過程で、破骨細胞に取り込まれた後、一種の細胞毒として作用して、破骨細胞の機能を停止させます。この結果、骨吸収が抑制され、相対的に骨量が増加します。副作用は、吐き気、食欲不振、下痢などの軽い胃腸障害が主です。まれに食道炎、食道潰瘍をきたすことがあります。ビスホスホネート製剤は、他の薬剤に比べて、骨量の増加作用がより強力です。しかし、この薬剤が本来生体内に存在しない物質であって、破骨細胞にたいして一種の細胞毒として作用すること、また骨への蓄積が予想されますが、比較的新しく臨床の場に登場した骨粗鬆症治療剤であり、長期投与の臨床例がまだ少ないことなどから、今後さらに症例を重ねて検討して行くことが必要であると思われます。

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