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第9話  骨粗鬆症の薬物療法(各論その1 カルシウム剤 前編)

 骨粗鬆症の薬物療法について、今回からは実際にどのような薬が用いられるのか、具体的にお話します。少し専門的になるかと思いますが、できるだけわかりやすく御説明したいと思います。骨粗鬆症の治療は、今までお話してきましたように、生活指導を含む食事療法、運動療法が原則です。ただし、前回に例示しましたように、幾つかの要件にあてはまる人にたいしては、積極的に薬物療法を開始することを検討します。現在、厚生労働省が、骨粗鬆症治療薬として認可し、臨床の現場で用いられている薬剤は主なもので現在8種類あります。これらを単独で用いることはほとんどなく、多くは併用療法です。繰り返しになりますが、どの薬剤とどの薬剤をを併用するのか、また投与間隔、投与量はどうするか、あるいは組み合わせをいつどのように変更してゆくのか、また副作用を適切にチェックするなどの判断は、綿密な治療計画と経過観察、専門的な知識と経験が必要です。ある意味では、専門医としての力量が問われるわけです。以下に、骨粗鬆症治療薬剤について、個別に御説明してゆきます。

1 カルシウム剤(薬品名アスパラカルシウム、乳酸カルシウム等)
 骨といえばカルシウムという連想がはたらくように、体内に存在する約1kgのカルシウムのほとんどが骨を形成するミネラルの主成分として存在しています。実は、人体の骨はできてからずっとそのままではなく、一生の間に何回も生まれ変わります。古くなった骨が壊されて吸収されつつ、そのそばから新しい骨が作られているのです。健康な状態では、このバランスがうまく保たれているのですが、骨粗鬆症では、何らかの原因でこのバランスが乱れ、骨を壊すほう、つまり骨吸収のほうに強く傾きます。この結果、骨を形成するカルシウムが減少し、骨量の低下とともに、骨がもろく弱くなってゆくのです。(この項続く)

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