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第7話  骨粗鬆症に合併する骨折(その3)

 骨粗鬆症に合併しておこりやすい骨折についてお話してきましたが、今回の二つの骨折のお話で最後です。

1 上腕骨頸部骨折
 上腕骨の肩関節部の頭の部分の骨折です。高齢者が肘や手をついて転倒したあと肩に激痛がはしり肩があがらなくなったり、ひどく腫れたりした場合にこの骨折を疑います。レントゲン撮影をこない、診断を確定します。単純に亀裂がはいったような、転位(骨折部のずれ)がほとんどない場合では、ギプス固定を3−4週間おこないます。軽度の転位であれば、医師の手で骨折部をもとのように整復して接合させ、同様にギプス固定をおこないます。ここで問題となるのは、かなり進行した骨粗鬆症の患者さんの場合です。骨がもろくなっているため、骨折部の転位が激しく、かつ3−4つの部分に分裂してしまうことがあります。この場合は、たとえギプス固定のみで治療しても、骨が癒合するまで2ヶ月以上かかることが多いため、肩関節の周囲の筋肉が萎縮したり、関節の動きが悪くなるなどの合併症をきたしやすくなります。こういった場合は、骨折部を金属プレートにより固定したり、場合により肩関節全体を人工の関節に置換する手術療法が選択されます。そして術後はできるだけ早く、筋力を増強し、肩関節を動かすリハビリテーションを開始します。リハビリテーションを早くおこない、合併症を防ぐために手術療法を選択する−この考え方は、以前お話ししました、大腿骨骨頸部骨折の場合と基本的に共通します。

2 助骨骨折
 かなり進行した骨粗鬆症の患者さんでは、くしゃみをしたり、机の角で軽くぶつかっただけで、いつまでも脇腹の痛みや腫れがとれないことがあります。このような場合助骨骨折をおこしていることがあります。診断がつけば、コルセットなどで3−4週間固定すればなおります。助骨骨折以外にも、高度の骨粗鬆症の患者さんでは軽く打撲しただけで該当部位の骨折をおこすことがあります。これは介護を担当する人も留意する必要があります。
 高齢化社会を目前に控えて、骨粗鬆症に合併する骨折はますます増加すると考えられ、適切に対処することが重要となってくると思います。

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