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第8話  骨粗鬆症の薬物療法(総論)

 骨粗鬆症について、今回からは薬を用いた治療−薬物療法についてのお話しです。少し専門的になるかと思いますが、“できるだけわかりやすく”ご説明したいと思います。
 さて、骨粗鬆症の薬物療法はいつから、どのようにしてはじめるのでしょうか?
 骨粗鬆症の治療は、前回もお話ししましたように、生活指導を含む食事療法、運動療法が原則です。ただし、次のような条件にあてはまるひとは、早期に積極的に薬物療法を開始する必要があります。

1) 骨塩定量検査で骨密度が標準値より20%以上減少しているひと、
2) 55歳以前に既に骨密度が低いと判定された、
3) 骨密度減少をきたしやすい合併症を有し、骨量が減少傾向にある−例えば、慢性関節リウマチなどの治療薬としてステロイドを服用している、胃癌などで胃を切除した、糖尿病、運動機能障害、栄養不良である−こういったひとは、正常人にくらべて、骨量の減少が高度にでやすいため要注意なのです。
4) 家族に骨粗鬆症に罹患したひとがおり、骨量が平均値以下でありかつ減少傾向にある(骨粗鬆症の遺伝的要因について最近かなりのことがわかってきました。これについては別の機会に、骨粗鬆症の最新情報としてとりあげる予定です。)

これらの条件にあてはまるひとは、積極的に薬物療法を開始することを検討します。
 では骨粗鬆症治療薬剤にはどのようなものがあるのでしょうか?
 現在厚生省が認可して本邦で使用されている薬剤には主なもので8種類あります。これらを単独で用いることはほとんどなく、多くは併用療法です。どの薬剤とどの薬剤を併用するのか、また投与間隔、投与量はどうするか、あるいは組み合わせをいつどのように変更してゆくのか、また副作用を適切にチェックするなどの判断は、綿密な治療計画と経過観察、専門的な知識と経験が必要です。
 具体的には、骨折の有無、背骨の曲り・疼痛の程度などの臨床所見、腰椎などの骨のレントゲン所見、骨量(骨密度)、骨代謝マーカー(骨の形成、吸収の度合いをあらわす生化学検査の指標)を含む血液検査の結果などを考慮して、さらに患者さんの個人の合併症、既往症や全身状態を評価して総合的に判断します。

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