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第6話  骨粗鬆症に合併する骨折(その3)

 骨粗鬆症に合併しておこりやすい骨折−今回は脊椎圧迫骨折についてお話します。
 高齢者がしりもちをついて転倒したり、不意に重い物を持ち上げた時に、背中や腰に激痛が走り歩けなくなったり、腰を屈伸しようとすると激痛がする−といった場合に、この骨折が疑われます。腰椎や胸椎の脊椎の上下の脊椎骨が、はさまれた脊椎骨をサンドイッチの様に圧迫しておこる骨折です。骨が丈夫な若い人なら骨折にはいたらずに腰部の捻挫、いわゆる“ぎっくり腰”ですむところが、骨粗鬆症の患者さんでは、もろくなった脊椎骨が圧迫にたえきれずに、潰れるようにして骨折してしまうのです。脊椎のレントゲンを撮影して診断を確定します。治療は原則として数週間臥床安静を保ち、必要なら消炎鎮痛剤により痛みをおさえます。これにより急性期の痛みが改善すれば、できるだけ早期に軟性コルセットを装着して歩行訓練や腰背部・下肢筋力の増強訓練などのリハビリテーションを開始します。まれに骨折部の変形した骨が脊髄を圧迫して足が麻痺することがあります。このような時は、圧迫する骨を除去して、不安定な部分を金属などを用いて固定する手術がおこなわれます。
 この脊椎骨の変形が、徐々におこってくることがあります。すなわちもろくなった脊椎骨が、いわば地盤沈下のようにゆっくりと潰れていくのです。女性に多いのですが、高齢になって腰が曲がって背が縮むのは、このためなのです。あまりひどく曲がってしまうと呼吸・循環機能にまでこの影響が及びます。また、当然高度の腰背部痛も合併しており、最後には動けなくなって寝たきりとなってしまうことがあります。骨粗鬆症がここまで進行してしまうと、レントゲン写真では、脊椎は非常に薄くしか写りません。また、複数の、時には脊椎全ての骨に圧迫骨折がみられます。これらは真綿で首をしめるように徐々におこってきますので、かえって怖いのです。女性の場合、閉経期前後から定期的に骨量を測定して自分の骨量を把握しておくことが肝要です。(骨量の測定についてはいずれ骨粗鬆症の予防の項で詳しくお話しします。)

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