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第4話  骨粗鬆症に合併する骨折(その1)

 今回から骨粗鬆症に合併しておこりやすい骨折とその診断と治療についてお話しします。
 骨粗鬆症にかかると骨がもろくなるために少しの外傷でも手首や股の付け根の骨折をおこしたりします。ひどい場合はくしゃみをしただけで助骨や背骨の骨が折れることさえあります。また、もろくなった脊椎骨に体重がかかることでつぶれてしまうことで、身長が低くなったり、腰が曲がったりするようになります。ひどい場合は痛みのために寝たきりとなってしまうことがあります。
 厚生省の調査によりますと、最も多い大腿骨頸部骨折の年間発生数は5年前で約八万人ですが、その他の骨折をいれるとさらに多くなり、また老齢者人口の増加につれて年々増加していると考えられます。また、脳梗塞などと並んで高齢者が寝たきりとなる主要な原因であり、超高齢化社会を目前に控えて大きな社会問題となっております。ここでは、骨粗鬆症に合併するいくつかの代表的な骨折について説明してゆきます。
 まずはじめに大腿骨頸部骨折についてお話しします。これは大腿骨の股関節に近い部分の骨折です。高齢者が転倒して腰から下肢を打撲した後に、股の付け根が痛くなり歩けなくなった、あるいは足を動かすと激しく痛む−こういった場合はこの部分の骨折が疑われます。この骨折は、一般の骨折と違って、ギプスによる固定やベッド上での安静では折れた骨が癒合しませんので、原則的に手術による治療をおこないます。また、手術をおこなうことによってある程度の体重をかけた歩行訓練や筋力増強訓練などのリハビリテーションを早く開始することができます。この結果、高齢者が長い間ベッド上安静を続けることでおこってくる体力筋力の低下や、肺炎や痴呆などの重篤な合併症を予防することができます。
 手術には、ボルトや金属の板を用いて折れた骨を直接接合する方法と、セラミックや金属でできた人口の関節や骨に置き換える方法の2種類があり、骨折の仕方によって適切な方法が選ばれます。麻酔の技術や術後管理が進歩した現在、80歳以上の高齢者でも手術を安全におこなうことができるようになりました。超高齢化社会を目前に控えてこの骨折の手術は今後ますます増加していく事が予想されます。

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