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第1話  変形性頸椎症

1 はじめに
「背骨の骨」、すなわち脊椎は、頚椎(くび)、胸椎(せなか)、腰椎・仙椎(こし)の三つのパートにわかれます。

 順を追って、これらの解剖から病気の診断治療についてご説明してゆきます。


2 総論
1)すべての脊椎に共通する病気には以下にあげるような疾患があります。
  (1) 先天奇形
うまれつき正常と違った構造をしているために、神経麻痺などの障害をきたすもの
  (2) 内分泌代謝の障害によるもの
骨粗鬆症(脊椎圧迫骨折をふくむ)、骨軟化症、くる病など
  (3) 細菌感染などの炎症性の疾患
化膿性脊椎圧迫骨折炎、結核性脊椎圧迫骨折炎一いわゆる脊椎カリエス
  (4) 腫瘍性疾患
原発性、転移性、悪性、良性骨腫瘍、軟部腫瘍、脊髄腫瘍(神経原性)など
  (5) 外傷性
骨折、脱臼、靭帯損傷

  このほかにもリウマチ性疾患などがありますが、詳細は別の機会に譲ります。

2)診断について

  1. 臨床症状
脊椎に特有な症状はいたみとしびれです。手のしびれや、腰の痛みを訴える患者さんを診た整形外科医はまず脊椎の病気を疑います。
  2. 検査
脊椎の単純レ線
うまれつき正常と違った構造をしているために、神経麻痺などの障害をきたすもの
脊髄造影
胃や大腸などの造影剤を用いた検査と同様に、脊髄に造影剤を注射して、神経と脊椎との関係を調べます。
CT、MRI
一般のCT,MRI検査と同様におこないます。特にMRIは簡便に神経の様子が観察できる有用な検査として、最近はルーチン検査としておこなわれます。
このほかに神経の電動速度を測定するなどの電気生理学的検査や筋力測定などがおこなわれます。

3 各論 くびのほね一頚椎
ヒトの頚椎は7つの脊椎骨でできています。面白いことに、実はあの長い首を持つキリンも頚椎の骨の数は同じ7つなのです。
頚椎の特徴は、腰椎とちがって脊髄が存在していることです。脊髄は運動、知覚、反射すべての神経が織り糸のようにあわさって構成されており、大脳と同じくらい重要な組織です。脳全体から出た神経の束が狭い頚椎部に集中していると考えてください。従って頚椎部で障害がおきますと、神経麻痩にともなう痙性歩行障害および痙性四肢不全麻痺や膀胱直腸障害などの重大な障害となってきます。
(1) 変形性頚椎症
脊椎の加齢による変性変形により骨棘が形成され、神経が圧迫されるのが原因です。
50歳を過ぎますと、その87%に見られるという報告があります。軽い症状としては、肩こりや頸肩腕の痛みしびれ、耳鳴り、めまい、くびの可動域制限などです。重大な神経症状となりますと、筋力低下、筋萎縮、知覚障害、膀胱直腸障害などの脊髄障害があらわれてきます。

(余談ですが、肩こりは、人種的に日本人に多く、欧米人にはすくないといわれています。肩こりに限らず、頚椎部の疾患は全般に同様な傾向を示しております。これは、欧米人に比べて日本人の頚部脊柱管が狭いことがひとつの要因といわれています。つまり、鶴のような細い首は美人の要素なのですが、頚椎の障害ということを考えますと、不利であるということになります。)

  <治療>
1) 保存的治療
安静 激しいスポーツの禁止などの局所の安静が基本です
頚部神経 ブロックなどのブロック療法一いわゆるペインクリニック
リハビリテーション 筋力増強訓練 頚椎牽引 低周波治療温熱療法など
頚椎を圃定する装具を着用する装具療法や頚椎の負担を軽減する日常生活動の指導など
2) 手術療法
脊髄障害などがありますと、保存的治療が奏功しない場合が多いため、手術療法が選択されます。詳細は省きますが、狭くなった脊柱管を拡大する脊柱管拡大術が最近ではよくおこなわれ、良好な成績が報告されており

※このほかの頚椎疾患については次回にご説明いたします。


簡単にできる肩こり体操
1. 無理せず、ゆっくり運動することが大切です。

2.

1日1〜2回、1つの体操を10回位行います。
3. 入浴後など肩をあたためてから行うと効果的です。

首の体操

 
(1) 首をゆっくり前に倒し、ゆっくり戻す。
(2) ゆっくり後ろに倒し、ゆっくり戻す。
(1) 首をゆっくり右に倒し、ゆっくり戻す。
(2) ゆっくり左に倒し、ゆっくり戻す。
(1) 首を左から右へゆっくり大きく回す。
(2) 同じように首を右から左へゆっくり大きく回す。
肩の体操
(1) 両腕を体につけて、肩を上にあげる
(2)

次にゆっくり肩をおろす

(1) 腕を伸ばし、肩を後ろから前にゆっくり回す。
(2) 同じように前から後ろへゆっくり回す。
(1) 両手を頭の後ろで組む。
(2) 両ひじを後ろに引く。
(3) 頭でてを押す。
筋肉を伸ばすストレッチ体操
肩甲骨を寄せる。 肩甲骨を上の方に 肩甲骨を前の方に
肩を内側に寄せ、できるだけ後ろへ上げる。 手のひらを上に向けて、ひじを伸ばす。 手のひらを外側に向けて、ひじを伸ばす。

3年前より歩行不能となったアテトーゼ型脳性麻痺患者の脊髄造影(48歳男)

第3・4頸椎椎体の癒合、椎体の扁平化、骨棘形成、成長期発生の脊柱管狭窄などを認め、脊髄腔に注入された造影剤は各レベルで圧迫を受けている。



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