あうと・おぶ・ばうんず


人間万事塞翁が馬

参考資料1.(https://mizote.info/image/02profile/30kaisetu_jinkan.html)

中国の北の方に占い上手な老人が住んでいました。さらに北には胡(こ)
という異民族が住んでおり、国境には城塞がありました。ある時、その老人の馬が北の胡の国の方角に逃げていってしまいました。

この辺の北の地方の馬は良い馬が多く、高く売れるので近所の人々は気の毒がって老人をなぐさめに行きました。ところが老人は残念がっている様子もなく言いました。

「このことが幸福にならないとも限らないよ。」

そしてしばらく経ったある日、逃げ出した馬が胡の良い馬をたくさんつれて帰ってきました。
そこで近所の人たちがお祝いを言いに行くと、老人は首を振って言いました。

「このことが災いにならないとも限らないよ。」

しばらくすると、老人の息子がその馬から落ちて足の骨を折ってしまいました。
近所の人たちがかわいそうに思ってなぐさめに行くと、老人は平然と言いました。

「このことが幸福にならないとも限らないよ。」

1年が経ったころ胡の異民族たちが城塞に襲撃してきました。
城塞近くの若者はすべて戦いに行きました。
そして、何とか胡人から守ることができましたが、その多くはその戦争で死んでしまいました。
しかし、老人の息子は足を負傷していたので、戦いに行かずに済み、無事でした。

この話は、中国の古い書物「淮南子(えなんじ)」に書かれています。

「塞翁」というのは、城塞に住んでいる「翁(おきな)=老人」という意味です。

「城塞に住む老人の馬がもたらした運命は、福から禍(わざわい)へ、また禍(わざわい)から福へと人生に変化をもたらした。まったく禍福というのは予測できないものである。」という事です。


参考資料2.(第26回京都賞ウイーク 教育イベント高校生特別授業「京都賞 高校フォーラム 」ー 人間万事塞翁が馬)

高校生を対象に山中先生が研究人生について講演され、「人間万事塞翁が馬」についても触れられた部分をご紹介します。

高校の時に先生にコテンパンに怒られて社会人になって、医者になってからだけでも……。
医者になってすぐに、まだ28歳でしたけど、最愛の父親を亡くしました。
自分にとっての最大のサポーターを亡くしてしまって。
今話したような山あり谷ありがあって、こういう研究ができたんだと。

みんなもこれから、今まではお父さんとかお母さんとか先生とか色んな人に守られて、助けられて、自分ではそう思っていなくても、たくさんの人に守られてここにおられるんですけど。
これからどんどん大学生になり、社会人になり、結婚して子供ができる人も多いと思います。

そうなっていく上で、色んな事が、いいことも、楽しいことも、辛いことも、悲しいこともあると思いますが、少しでも今日の僕の話を思い出してもらって「万事塞翁が馬」だと。

悪いときは必ずいいことがあります。いいことがある一歩手前です。
かがむとジャンプできます。そうでしょう。
いい時は用心しましょう。何か悪いことがあるかもしれません。
先生に褒められているときは用心しましょう、家に帰ったらお母さんに怒られるかもしれません。

そんな風に一喜一憂しないということがとっても大切だと思います。
僕たちも色んなことに失敗を恐れず挑戦してきました。
やらずに後悔するんだったら、やって後悔する方が良いと思います。

僕もアメリカに行くときも悩みましたが、本当に行って良かったと思います。
みんなも失敗することは全然恥ずかしいことではありません。
これからみんなが日本を支えていく本当の力になっていくんですから。(後略)

対象は高校生ですが、IPS細胞について丁寧にわかりやすく説明されております。 「塞翁の馬」が何度か山中先生の人生にあらわれては消えたことがわかります。お暇なときにぜひご高覧ください。